視覚障害のある児童の地理的空間認知能力を育む
自分は今どこにいるのか
あなたは住所や通っている学校の所在地を正確に書いたり伝えたりできるでしょうか。住所は言えるけど学校の所在地を正確に伝えることは難しいのではないでしょうか。現代の小学生がどれほど住所を伝えられるかは不明な点が多いです。住所を言ったり書いたりする機会や住所を知らなくても生活上困る経験が少ないからかもしれません。例えば北海道へ旅行に行き、現地の人に「どこからきたのか」を聞かれた際に、地元の市区町村名や最寄り駅の名前を答えてしまうと伝わりにくいでしょう。住所に含まれる地理的知識を活用するためには、自分がいる場所について知っておくことがが重要です。
地図を読む
自分がいる場所を理解して、状況に合わせてそうした知識をうまく活用する中で「地理的空間認知能力」を育むためには、地図を使った教育が有効です。地図を読むと自分が暮らす地域がどこにあるのか、そしてほかの地域との距離や位置関係などがに理解できます。また、地名や地形、道路や施設など、さまざまなの情報に触れることができます。しかし、視力の弱い児童あるいはまったく見えない全盲の視覚障害のある児童にとっては、地図を読むことは簡単ではありません。わかりやすい地図を作成するためには、地図の情報量を調整するなどのさまざまな配慮が必要です。
社会参加の機会を増やす
晴眼(目が見える)の児童に比べて、視覚障害のある児童は情報の取得や移動において制限があるため、地理的空間認知に関わる視覚障害の専門的な教育と研究が不可欠です。例えば、これまで視覚障害のある子どもがどんな地理的知識をもっているのか、そこにはどんな課題があるのかを明らかにすることや、弱視の人向けに情報量を調整した地図帳や、全盲の人向けの点字地図帳をつくることも、その一環です。こうした研究が発展することで、視覚障害のある児童の地理的空間認知能力が高まる可能性があります。そして、多くの人や場所、文化に触れるといった社会参加の機会が増えることにもつながっていくことが期待されます。
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