講義No.14583 教育 児童学

視覚障害のある児童の地理的空間認知能力を育む

視覚障害のある児童の地理的空間認知能力を育む

自分は今どこにいるのか

あなたは住所や通っている学校の所在地を正確に書いたり伝えたりできるでしょうか。住所は言えるけど学校の所在地を正確に伝えることは難しいのではないでしょうか。現代の小学生がどれほど住所を伝えられるかは不明な点が多いです。住所を言ったり書いたりする機会や住所を知らなくても生活上困る経験が少ないからかもしれません。例えば北海道へ旅行に行き、現地の人に「どこからきたのか」を聞かれた際に、地元の市区町村名や最寄り駅の名前を答えてしまうと伝わりにくいでしょう。住所に含まれる地理的知識を活用するためには、自分がいる場所について知っておくことがが重要です。

地図を読む

自分がいる場所を理解して、状況に合わせてそうした知識をうまく活用する中で「地理的空間認知能力」を育むためには、地図を使った教育が有効です。地図を読むと自分が暮らす地域がどこにあるのか、そしてほかの地域との距離や位置関係などがに理解できます。また、地名や地形、道路や施設など、さまざまなの情報に触れることができます。しかし、視力の弱い児童あるいはまったく見えない全盲の視覚障害のある児童にとっては、地図を読むことは簡単ではありません。わかりやすい地図を作成するためには、地図の情報量を調整するなどのさまざまな配慮が必要です。

社会参加の機会を増やす

晴眼(目が見える)の児童に比べて、視覚障害のある児童は情報の取得や移動において制限があるため、地理的空間認知に関わる視覚障害の専門的な教育と研究が不可欠です。例えば、これまで視覚障害のある子どもがどんな地理的知識をもっているのか、そこにはどんな課題があるのかを明らかにすることや、弱視の人向けに情報量を調整した地図帳や、全盲の人向けの点字地図帳をつくることも、その一環です。こうした研究が発展することで、視覚障害のある児童の地理的空間認知能力が高まる可能性があります。そして、多くの人や場所、文化に触れるといった社会参加の機会が増えることにもつながっていくことが期待されます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者基礎教育研究部 助教 嶋 俊樹 先生

筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者基礎教育研究部 助教 嶋 俊樹 先生

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視覚障害教育学

メッセージ

あなたがすでに「自分の強み」を理解しているなら、それを軸に大学を選べばよいと思います。まだ見つかっていなくても、強みになる「何か」は必ずあるので、それを見つけることが将来につながると思います。また、大学に入学すると住所が変わるかもしれませんが、自分がいる場所を正確につかむことは大切です。私は視覚障害者に対する地理教育や空間認知能力について研究していますが、あなたが自分の強みを見つける上でも、「自分はどこの誰なのか」を理解することは大切であるということも、知っておいてほしいです。

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