運動し過ぎても、しなさ過ぎてもけがをする 子どもと運動との関係

運動し過ぎても、しなさ過ぎてもけがをする 子どもと運動との関係

子どもの頃の運動が重要

現代の子どもたちは、運動をし過ぎる子と、全く運動をしない子に二極化しており、どちらもけがにつながる可能性が高いです。例えばスポーツで同じ動きをくり返すと、体の一カ所にダメージが蓄積してけがをしやすくなります。また、運動の習慣がないために、転んで地面に手をついたときにうまく衝撃を吸収できず、骨折する子も珍しくありません。どちらの場合も、走る、投げる、跳ぶなどの基本的な運動動作を覚えられれば、けがを防ぎやすくなります。ただし動きには人それぞれの癖がついており、中高生になっていきなり変えるのは難しいため、幼いうちに正しい動作を覚えることが重要です。

未発達な動作とけがの関係

未発達な動作は、けがをするときの動作に似ています。これは小学生の基本的な運動動作を、数年にわたって継続的に分析することでわかってきた成果です。例えば小学校低学年の子どもが立ち幅跳びをすると、多くの場合は膝をほとんど曲げずに着地します。従来はそれが高学年になると、股関節と膝を柔軟に使って深くしゃがみながら着地をする傾向が見られました。ただし現代では、高学年になっても膝をほとんど曲げずに着地する子どもが増えており、衝撃をうまく吸収できません。比較の結果、これは膝の靱帯(じんたい)が切れるときの動きに似ていることもわかりました。

適度な負荷で経験を積む

動作の発達を促すには、経験が必要です。例えばジャンプの正しい着地を促す場合、適度に高い場所から飛び降りて、深くしゃがむ着地を経験させます。子どもは筋力が未発達なため、高所から着地すると、自然に膝が曲がって衝撃を逃がすフォームになります。このようにある程度の負荷を与えると、正しい動作を獲得できます。ただし負荷を与えすぎるとけがをするため、発達段階に合った適度な負荷を見いだすことが求められています。理学療法士やスポーツトレーナーたちは、けが予防のためにも子どもに正しい動作を教えようと、研究や指導に取り組んでいます。

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健康科学大学 健康科学部 リハビリテーション学科 理学療法学コース 教授 粕山 達也 先生

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発達運動学、スポーツ理学療法、学校保健

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メッセージ

あなた自身が積み上げてきた経験が、将来の道を切り開くと思います。無駄な経験は一つもありません。例えばけがをした経験はマイナスに感じるかもしれませんが、理学療法などの医療福祉系分野では、むしろプラスの糧になるでしょう。ぜひ高校生のうちにさまざまな経験を積んでほしいです。もし私と同じスポーツ科学や発達運動学にも興味があれば、気持ちはけがをするくらいの本気度でスポーツに取り組んでほしいです。一つのことに真剣に打ち込んだ経験は、きっと大学でもあなたの力になるでしょう。

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健康科学大学は、健康科学部リハビリテーション学科(理学療法学コース・作業療法学コース)、人間コミュニケーション学科、看護学部看護学科の2学部3学科からなる大学で、少人数を基本とした多彩なカリキュラムときめ細かな個別指導により、一人一人の幅広い進路選択を実現します。
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