フランス革命前の時代は、国王の独裁だったのか?
フランス革命とはどのような出来事だったのか?
フランス革命は、旧体制(アンシアン・レジーム)を打倒した近代の幕開けとして、これまで肯定的に描かれてきました。しかし実際には、民主主義の名のもとの独裁や排外主義、少数派の弾圧や植民地支配など負の側面を有したこともわかってきています。人権宣言についても、当初は女性の権利は考慮されていませんでした。このように、すでに一般的と思われている歴史の出来事でも、まなざしの向け方次第でとらえ方も変わってくることがあります。
リヨンに見る「絶対王政」の実像
革命を複眼的にとらえる研究が進む中で、近世を見るまなざしも変化してきました。革命前のフランスは「絶対王政」の時代と呼ばれますが、実際の統治はもっと複雑でした。例えば、16世紀のリヨンを見てみましょう。リヨンはイタリアに近い地方都市で、当時メディチ家をはじめとする金融業者や商人が集まり経済中心地として栄えていました。もし文字通りの絶対的な王政だったら、リヨンにお金を払わせるためには単純に税額を上げれば済む話です。しかし実際には、国王はリヨンの自治を尊重して特権を与えつつ、行政への協力を要請したり、拠出金を求めて交渉していたことが、当時の都市参事会の議事録に記されています。まさに「持ちつ持たれつ」の共生関係だったのです。このようなリヨンと王権の関係は、一般的に「絶対王政」と呼ばれるこの時代の実態が、中央と地方の間の力のバランスの上に成り立っていたことを示しています。
歴史から普遍的な問題を考える
このことは遠い国の過去の出来事というだけではありません。中央と地方の関係のあり方や統治者の権力の問題は、時代や地域を超えて社会の構成員である私たちに普遍的な問題を投げかけています。歴史研究は、「知っているつもり」だった過去の出来事を、自分の関心に基づきつつ新たな視点で史料を読んでみて、とらえ直すことです。それは単なる知識の蓄積ではなく、現代社会の課題に対する深い洞察と未来を築くためのヒントを与えてくれるのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 文学部 人文学科 西洋史学 教授 小山 啓子 先生
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