中世ヨーロッパの歴史から、現在の世界を理解する

1000年ごろの西ヨーロッパ
西暦1000年ごろの西ヨーロッパ世界は大きな変革期を迎えていました。古代ローマ帝国は395年に東西に分裂し、東はビザンツ帝国として15世紀半ばまで続いていきます。一方の西ヨーロッパは、800年にフランク王国のカール大帝が皇帝に戴冠して西ローマ帝国の伝統をよみがえらせると、その死後、国は3つに分裂し、ドイツ、イタリア、フランスの原型となる国々が誕生しました。大国から小さな国々が自立する中で民族意識も芽生え、今日まで続く国の姿ができていったのです。
時代の節目の終末論
この時代は、一部の知識人の間で「終末論」が盛り上がった時代でもあります。聖書は、旧約聖書の天地創造の物語から始まり、世界の終わりの姿を描く新約聖書の『ヨハネの黙示録』で終わります。キリスト教には「千年王国」という考え方があり、平穏な時代が千年続くと、キリストの敵対者の竜(サタン)が現れ、人々を苦しめる最終戦争を経て、人間は最後の審判を迎えるとされています。人々は時代の節目、特に危機的な時代に差し掛かると、自分たちは今キリスト教の時間軸のどこに位置しているのだろうと考えました。1000年ごろは温暖化や農業技術の発展により人口が増える一方、外部の異教徒の襲撃を受けた苦難の時代でもありました。一部の聖職者たちは聖書をひも解き、「世界の終わりが間近いのでは」と考えたのです。終末論は単なる信仰上のテーマにとどまらず、やがてはキリスト教勢力が団結してイスラム教勢力からエルサレム奪還をめざす十字軍遠征へと展開していきます。
ヨーロッパを理解するために
ヨーロッパ27カ国はEUという超国家的組織を構成していますが、その原型が形作られたのがまさにこの時代でした。個々の国々の枠組みが形作られる一方で、キリスト教という共通の精神的背景をもとに、国を超えた一体感や共通の文化的アイデンティティが形成された重要な時代だったのです。この時代の歴史と宗教を見ることで、今日のヨーロッパをより理解することができるでしょう。
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