「スマート治療室」は外科医の新しい目・頭脳・手だ!
外科医の新しい目・脳・手を創る
脳にはさまざまな機能をつかさどる領域がありますが、そこにはどこが言語中枢でどこが運動神経系だという目印はありません。脳外科手術はこれまで医師が経験や勘に基づき目で見て行ってきましたが、脳の領域を客観的にナビゲートできる医療機器があれば、治療の安全性や確実性は飛躍的に高まります。そのような「外科医の新しい目・頭脳・手」となって手術を精密に誘導できる医療機器の開発が進められています。そのひとつが、次世代型手術室「スマート治療室」です。
手術をデジタル化、機器をネットワークでつなぐ
これまで、手術室は医師が手術を行うための単なる場所でした。そこで使用されるいろいろな機器は特に連携することなく、手術も術者が必要な情報を覚えて行うアナログ的な方法でした。
それに対して、手術室自体をひとつの医療機器として捉えたのがスマート治療室です。その大きな特徴は手術のデジタル化・見える化です。MRIによる画像診断や、増殖期にある腫瘍細胞の数値化といった情報の可視化は「外科医の新しい目」となります。また機器はすべてネットワークでつながれ、それぞれから得られる情報は統合的に管理されてモニタに表示されます。「外科医の新しい頭脳」です。スマート治療室は手術中の意思決定もサポートするため、正確な手術につながるだけではなく、医師の負担減にもなると期待されます。
事業化できる医療機器を
「外科医の新しい手」はロボットです。ロボットを使うとより小さな切開での手術が可能です。ロボットの動きはデジタル情報として残るため、若手の技術習得にも役立ちます。将来は、そのデータを基にして自動手術が可能になるかもしれません。そのほか「新しい手」として、光などの物理的な力と薬を組み合わせた治療法の研究も行われています。
ただ、いかに優れた医療機器であっても、現場に普及するには継続的に売れて事業として成立する必要があります。そのため、開発には「売れる治療機器」という視点も重要なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 医学部 医療創成工学科 ※2025年4月設置 教授 村垣 善浩 先生
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