運動前ストレッチングは逆効果? 体の動きを科学で解き明かす

スペシャリストが解き明かす体の仕組み
理学療法学は、病気やけが、加齢などにより体の動きに制約がある人々の社会参加や活動を支援するために、「動作」の側面からアプローチする学問です。人の動きには、脳や神経や循環器など、さまざまな組織や器官が関わっています。その中で、筋肉や骨格、関節など、実際の動きを生み出す組織を対象とする分野を「運動器理学療法学」といい、「運動器」と呼ばれるメカニカルな部分に焦点を当てて、その仕組みを明らかにしていきます。そこで得られた知見を土台に、機能を改善する方法の開発をめざすのです。
マッサージ効果の意外な真実
具体的な研究として、これまで経験則で行われてきた手技の効果を、種々の計測機器を使って科学的に検証する研究が進められています。例えば、組織硬度計という機器を使って筋肉の特性変化を定量的に測定し、その効果を実証的に確認することで、科学的根拠に基づいた理学療法の確立につなげます。
代表的な手技にマッサージがあります。多くの人に経験のある身近な手技ですが、その効果については実は科学的な解明が十分ではありません。近年の研究では、あるマッサージ方法が単に筋肉の「硬さ」を和らげるのではなく、「粘弾性」という特性を変化させている可能性があることなどがわかってきました。このような発見は、より効果的なマッサージ方法の開発につながる可能性を秘めています。また、スポーツの分野では、運動前のストレッチングが必ずしもパフォーマンス向上につながらず、逆に低下させてしまう場合もあると言われており、まだまだ研究の余地があります。
科学の力で見つける最適な理学療法
人体は非常に複雑で、同じ理学療法プログラムでも人によって反応が異なることがあり、まだまだ解明されていない部分が多く残されています。科学的な検証を重ねて、日常的に行われている動作の中にある「なぜ?」を一つずつ解き明かしていくことで、より効果的な理学療法やトレーニング方法の開発が期待されています。
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