スポーツ科学から見えてくる新たな理学療法の世界

トレーニングと日常の間にあるリハビリテーション
リハビリテーションというと、病気やけがからの復帰のお手伝い、というイメージが強いでしょう。しかしスポーツ選手がけがをした場合、病院でいわゆるリハビリをしている期間と、選手としての本来のトレーニングをする期間との間に、「日常生活は問題ないが、本格的なトレーニングはできない」という期間があります。この部分の研究は、まだまだ充実しているとは言えません。
スポーツ選手としては早く復帰したい気持ちがありますが、体に大きな負荷をかけてリハビリの時間を短縮すると、当然、再発のリスクが高まります。どうすればリスクは低いままで激しい運動ができるか、呼吸法なども含めて研究することも理学療法に求められる新たな領域になっています。
効果的なトレーニングやウェアの開発も
スポーツ選手にとって靱帯やアキレス腱などの損傷は、選手生命を直接左右します。そこで慎重を期しつつ、安全で効果的なトレーニング方法を開発する必要があります。また、靱帯などの再建手術をしても、スポーツの厳しい環境では再損傷のリスクが高まります。そういうわけで、再損傷を防ぎながら身体機能の回復に役立つトレーニングウェアを開発する、といったことも理学療法の領域に入ります。体への最適な負荷をシミュレーションなどで予測しながら、研究が進んでいます。
手術や本格的なトレーニングはどんどん技術が進歩していますが、その間のリハビリの研究、つまり体への負担を測りながらパフォーマンスを上げていくバイオメカニクスの研究領域は、これから大きく進歩していく途上にあります。
高齢者のけがの予防へも広がる研究
この研究は、高齢者のけがの予防にも役立ちます。もし1割でも転倒事故を防ぐことで、寝たきりになる高齢者を減らすことができれば、年々増加する国の医療費を大きく抑制できます。そのため、高齢者医療においても、従来の「けがをしてから対処する」から「けがを未然に防ぐ」方向へと、研究が広がっているのです。
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四條畷学園大学リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授向井 公一 先生
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