レーザーで痛みを和らげる? 「物理療法」に秘められた可能性
物理的な刺激を作用させる治療法
病気やケガ、障がい、高齢などが原因で、運動機能が低下し、体にさまざまな問題を抱える人に対して、それらの改善を促すために行われる治療の一つに「理学療法」があります。その理学療法の中でも、レーザー光や電気、超音波、温熱など、物理的な刺激を体に作用させる治療法は「物理療法」と呼ばれており、薬を使わない治療法です。
神経にレーザーを当てて痛みを和らげる
私たちが体のどこかに痛みを感じる時、その感覚は、痛みのある部位から神経を伝わって脳に届き、痛みとして知覚されます。このうち、患部と脳をつなぐ神経にレーザー光を照射すると、痛みを和らげることができます。この治療法は、部分的に神経過敏になっている状態を鎮めたり、脳卒中などの原因で筋肉が硬くなっている部位の神経活動を抑制する効果もあることがわかっています。
レーザー光などの照射になぜこのような効果があるのか、明確な理由はまだ明らかになっていない部分も多いのですが、光線照射による神経に対する熱作用や、光の粒子自体が生体に何らかの影響を及ぼす光化学作用などがその要因として考えられています。
患者に優しい物理療法
物理療法は、患者にとって優しい治療法です。治療時に痛みを感じることが少なく、通常は副作用もほとんどありません。スポーツ選手にとっては、ドーピング検査などの心配もいらないため、安心して受けられる治療法です。手術後に物理療法を施すと手術創の治りが早くなるなど、応用範囲が幅広いことも特長です。また、治療者側の人間にとっても、人間の体の仕組みの基本をしっかり学び、治療時に使用する器具の扱い方をきちんと習得しておけば、治療自体はそれほど難しいものではありません。
理学療法士の中でも積極的に物理療法を行っている人の割合はそれほど多くありませんが、物理療法は、これから大きく発展する可能性を秘めた治療法なのです。
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高崎健康福祉大学 保健医療学部 理学療法学科 教授 竹内 伸行 先生
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