帰り道はショートカット! ミツバチの高性能ナビの仕組みを解明

高度なナビゲーションができる理由
ミツバチなどの社会性昆虫は、食物を探して巣に持ち帰るために、優れたナビゲーション能力を持っています。ヒトを含む哺乳類の場合、脳内にある「認知地図」に従って精度の高いナビゲーションを行います。一方、昆虫の脳はずっと小さく神経細胞の数も少ないにもかかわらず、主に「経路積算」と呼ばれる別の方法で迷うことなく帰巣できます。
経路積算とは、方向と距離の情報を頭の中で足していくことで、自分の現在地と目的地の位置関係を把握する方法です。これにより、昆虫はいろいろな道をたどって食物を見つけたとしても、最短距離で巣に帰ることができるのです。
空の偏光を利用して方向を知る
ミツバチが方向を知るために利用しているのは、空の「偏光」です。偏光とは、太陽光が大気中の粒子で散乱して生じる向きの偏った光です。人間には見えませんが、昆虫は複眼の特別な領域で認識できます。もっとも偏光の向きは太陽の動きとともに変化するため、概日時計(体内時計)で補正していると考えられます。実際、複眼の偏光を見る視細胞は、概日時計に関連する神経細胞の近くにつながっています。また、ミツバチに麻酔をかけて時差ぼけのような状態にした後で放すと、正しい方角からずれた方向へ飛ぶことが観察されています。
一方、距離の情報は周囲の景色の流れ(オプティックフロー)で確認していると考えられます。
ロボットにも応用可能
ミツバチは蜜を探して何キロも飛行するため、野外でミツバチがどのように飛ぶかを研究することは容易ではありません。そこで、実験ではミツバチを捕まえてワイヤーでつるし、前から風を当てて流れる風景や偏光、ランドマークを見せるバーチャルリアリティ環境を作り、その中を飛ばして観察します。
ミツバチは、小さな脳で高度なナビゲーションを行い、集団として効率的に蜜を集めます。その仕組みがわかれば、単純な回路からなる「探索ロボット」やそれらが集団で能力を発揮する「群ロボット」にも応用できると期待されています。
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