皮までとことん活用! 栄養と機能性が満点の柑橘類「ジャバラ」
自然雑種の柑橘(かんきつ)類、ジャバラ
和歌山県では、「ジャバラ」という果物が栽培されています。もともと和歌山県の北山村に自生していた自然雑種の柑橘類で、ほかの地域には存在しない品種です。その独特の芳醇(ほうじゅん)な酸味と風味は、地元で古くから珍重されてきました。
ジャバラには、植物色素のフラボノイドの一種であるナリルチンという成分が豊富に含まれています。このナリルチンは、多くの現代人を悩ませている花粉症の症状改善に効果があることが報告されています。また、体内での内臓脂肪の蓄積を抑制する効果や潰瘍性大腸炎の抑制にも効果を示すことが、マウスによる実験で明らかになっています。
皮の部分を活用するために
これまでジャバラは主にその果汁を搾って、ジュースや食酢などの食品として消費されてきました。しかし、ジャバラの成分分析が進むにつれ、ジャバラの皮の部分には果汁よりも多くのナリルチンが含まれていることがわかりました。そこで、この栄養豊富な皮の部分を食品としてうまく活用するための研究開発が進められました。
そして、ジャバラの皮に含まれる栄養素をできるだけ損なわないよう食品として加工するために、ペクチナーゼという酵素を添加し、皮に含まれるペクチンの分解を促進させる手法が考案されました。この手法を用いてジャバラのジャムを作ると、加熱して煮込むよりも低温で加工できるため、ナリルチンなどの有効成分や栄養素が残りやすく、見た目の色合いもきれいに仕上がります。
SDGsにもかなう利用法
この新たな加工法の開発によってジャバラスプレッドが誕生しました。従来は果汁を搾った後に廃棄されていたジャバラの皮の部分も、無駄なく活用することが可能になりました。現在はこのスプレッドを原材料としてジェラートやマフィンなどが商品化されています。SDGsの観点からも理にかなっているこれらの加工法によって、ジャバラは和歌山県特産の栄養豊富な柑橘類として、全国的に注目を集めることになりそうです。
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先生情報 / 大学情報
園田学園大学 ※2025年4月 現・園田学園女子大学より名称変更 人間健康学部 食物栄養学科 教授 渡辺 敏郎 先生
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