花の形態を制御する遺伝子を見つけて品種改良に生かす
ダイコンの品種、いくつ言えますか?
煮物や鍋物に入れたり、サラダにしたり、漬け物にしたりと、さまざまな食べ方ができるダイコンは、私たちにとって身近な野菜のひとつです。市場に最もよく出回る「青首大根」をはじめ、東京の「練馬大根」や京都の「聖護院(しょうごいん)大根」、鹿児島の「桜島大根」のように地域の特産品になるなど、各地で数百もの品種が栽培されています。ダイコンのルーツは地中海沿岸と言われますが、なぜ日本でこのようにたくさんの品種が作られるようになったのでしょうか。
用途に応じて品種改良が進んだ
品種によって、ダイコンがさまざまな大きさや形、色、味をしているのは、煮物用や沢庵用、生食用など、用途に応じて品種改良が行われた結果と言えます。日本の食文化が発達するにつれ、多様な品種が栽培されるようになったのです。例えば、スーパーなどで売られている品種と、家庭菜園向けの品種も異なります。家庭菜園では、形や大きさが不揃いでも味の良いものが好まれますが、店頭で販売されるものは、味に加え日持ちがして見た目も良い品種が求められるのです。
遺伝子は未来への大切な資源
新しい品種を作るには、まず目当ての性質を持つ品種を交配して種子(F1品種)を作ります。しかし中には、自殖(自家受粉)してしまうものがあり、種子の品質が均一にならないという悩みがあります。通常ダイコンは、「自家不和合性」という自殖しない仕組みを持っていますが、それが完璧に働かないことがあるのです。それならば自殖が起こりにくい品種を作ろうと、花の柱頭と葯(やく:花粉の入っている部分)の距離が離れた品種が研究されています。ダイコンの花の形態を制御する遺伝子を探して、品種改良に役立てようというのです。
このようなバイオテクノロジーの根底にあるのは、「遺伝資源」という考え方です。さまざまな力を持つ遺伝子を次世代に残し活用しようというもので、近年では、生物多様性を守るキーワードとしても重要視されています。
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