一人一人の声が宝物 声楽における表現の可能性

人間の体が奏でる音楽
人間の声は最も自然で美しい音楽を奏でます。声楽では、人それぞれの体が声を生み出す楽器となります。身長や体格、声帯の大きさなどは一人一人異なるため、声楽研究では、その人固有の声の魅力を引き出す発声法を見つけることが非常に大切です。力むことなく自然に声を解放すると、大ホールでもマイクなしで美しく響く声を生み出せます。一人一人の体と声に最も適した発声法を見い出すことは、声楽研究の大きなテーマです。
舞台表現と発声技術の探究
声楽家は、アスリートのように体全体を駆使して表現を作り出します。オペラの舞台上では、激しい動きの中や不安定な体勢で歌うときでも、安定した発声を保ち続けなければなりません。例えば、舞台上で寝転んだり、さまざまな体勢で歌う場合でも、声が揺れたり弱くなったりしないように体の芯をしっかりと支えながら歌います。声が美しく響くためには、声帯から生まれた声を最大限に響かせるための緻密な体の使い方が必要です。履く靴の選び方から姿勢の研究まで、声楽家は体全体で音楽を作り出す技術を追求しているのです。
オペラ表現の新しい挑戦
オペラ研究では、演出家からの多様な要求に応える表現方法が追求されています。演劇やダンスの演出家と一緒に作り上げる中から、従来の枠を超えた声楽表現が生まれています。感情や物語を伝えるため、声の明るさや柔らかさ、力強さを自在に操る必要がありますが、声質の変化は決して声だけの問題ではありません。体の使い方や姿勢、呼吸法を変えることで、大きく変化します。声と体の関係を深く理解して、演技と歌が一体となった表現を作り出すことが研究の目標です。
声楽の研究は社会のさまざまな場所で生かされています。全国各地で開催される第九の演奏会には高校生も参加し、また70歳代の人々も合唱団で生き生きと歌うなど、音楽を通じた社会とのつながりは確実に広がっています。声楽研究は、より多くの人々に音楽の喜びを届け、豊かな文化を育む基盤となっているのです。
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愛知県立芸術大学音楽学部 音楽科 声楽専攻 准教授森 寿美 先生
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