講義No.14726 音楽

一人一人の声が宝物 声楽における表現の可能性

一人一人の声が宝物 声楽における表現の可能性

人間の体が奏でる音楽

人間の声は最も自然で美しい音楽を奏でます。声楽では、人それぞれの体が声を生み出す楽器となります。身長や体格、声帯の大きさなどは一人一人異なるため、声楽研究では、その人固有の声の魅力を引き出す発声法を見つけることが非常に大切です。力むことなく自然に声を解放すると、大ホールでもマイクなしで美しく響く声を生み出せます。一人一人の体と声に最も適した発声法を見い出すことは、声楽研究の大きなテーマです。

舞台表現と発声技術の探究

声楽家は、アスリートのように体全体を駆使して表現を作り出します。オペラの舞台上では、激しい動きの中や不安定な体勢で歌うときでも、安定した発声を保ち続けなければなりません。例えば、舞台上で寝転んだり、さまざまな体勢で歌う場合でも、声が揺れたり弱くなったりしないように体の芯をしっかりと支えながら歌います。声が美しく響くためには、声帯から生まれた声を最大限に響かせるための緻密な体の使い方が必要です。履く靴の選び方から姿勢の研究まで、声楽家は体全体で音楽を作り出す技術を追求しているのです。

オペラ表現の新しい挑戦

オペラ研究では、演出家からの多様な要求に応える表現方法が追求されています。演劇やダンスの演出家と一緒に作り上げる中から、従来の枠を超えた声楽表現が生まれています。感情や物語を伝えるため、声の明るさや柔らかさ、力強さを自在に操る必要がありますが、声質の変化は決して声だけの問題ではありません。体の使い方や姿勢、呼吸法を変えることで、大きく変化します。声と体の関係を深く理解して、演技と歌が一体となった表現を作り出すことが研究の目標です。
声楽の研究は社会のさまざまな場所で生かされています。全国各地で開催される第九の演奏会には高校生も参加し、また70歳代の人々も合唱団で生き生きと歌うなど、音楽を通じた社会とのつながりは確実に広がっています。声楽研究は、より多くの人々に音楽の喜びを届け、豊かな文化を育む基盤となっているのです。

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先生情報 / 大学情報

愛知県立芸術大学 音楽学部 音楽科 声楽専攻 准教授 森 寿美 先生

愛知県立芸術大学音楽学部 音楽科 声楽専攻 准教授森 寿美 先生

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ドイツ歌曲、宗教曲、オペラ

先生が目指すSDGs

メッセージ

音楽への夢を持っているなら、今からでもその一歩を踏み出してほしいです。声楽は高校から始めても遅くはありません。音楽を通じて人とつながり、自分の可能性を広げる機会は、必ず見つかるはずです。「努力」と「諦めないこと」が大切で、結局最後まで諦めずに続けていた人が音楽の世界では生き残っています。広く海外にも目を向けて、自分の可能性に挑戦してください。あなたは才能とチャンスの固まりです。進路のことも一緒に考えながら、音楽の道を探っていけることを楽しみにしています。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

愛知県立芸術大学に関心を持ったあなたは

愛知県立芸術大学は、全国でも数少ない美術学部と音楽学部を併設した公立の芸術大学として1966年に開学しました。 芸術力と人間力を育む大学を目指し、〈芸術文化にたずさわる優れた人材を育成する〉〈国際的な芸術文化の創造・ 発信拠点となる〉〈社会と連携し、芸術文化の発展に貢献する〉ことを目標としています。
6月頃にオープンキャンパスを実施しており、各専攻・コースごとのイベント、施設見学等の企画を予定しています。また、個別での大学見学を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。