触れて、感じて、理解する~パーカッションで社会を考える〜

日常に溶け込む「触れる/叩く」行為
私たちは日常生活で「触れる/叩く」という行為を頻繁に行います。例えば、コップをテーブルに置く、ドアノックする、拍手をする、杖を使って歩く、などです。また、医師が患者の体に触れたり叩いたりする触診や打診、工場などで行う打音検査など、社会のいろいろな場面で「触れる/叩く」技法が活用されています。この「触れる/叩く」技法について深掘りすると、触覚・表現・感情伝達、というキーワードが浮かび上がってきます。
触覚を駆使した表現とコミュニケーション
杖を使って道を歩くとき、杖を路面にコツンと触れさせますが、このとき手指は路面から衝撃を感じます。打楽器の演奏もこれと同じで、奏者は自分が手に持つバチが打面に当たったときの衝撃を感じます。卓越した打楽器奏者は、触覚を駆使して打面への触れ方をコントロールする高度な技法によって表現をしているのです。
触れることで感情を伝えることも可能です。例えば、短い木の枝を持って向かい合った2人が枝を触れ合わせてみると、触れたときの音と振動の強弱から相手の感情を感じ取ることができます。これは、触覚で相手を感じて理解する、言語を介さないコミュニケーションだと言えます。
パーカッションで社会を再考する
打楽器も医師の打診も、どちらも英語でpercussion(パーカッション)です。そこから、私たちの社会のさまざまな「触れる/叩く」行為も「パーカッション」だとして広く捉えることができます。
現代社会は触覚への意識が難しい状況です。例えば満員電車で乗客同士の肩が強く触れても気にとめない場面がある一方で、わずかな身体接触がハラスメント問題に発展することもあります。触覚に対する鈍感さと過敏さが同時に存在する社会において、広い意味での「パーカッション」を通じて触覚が何を伝えて何を感じ取れるのかを再考することが求められています。
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