「日本語でしゃべる」を科学すると、見えてくる「意外なこと」
日本語の音声を語学教育の発想でとらえる
正しい日本語の音声とは、相手に伝わりやすい、つまり「違う音に聞こえない」音声のことです。しかし、私たちはふだん意外と曖昧に発声しているため、他言語の話者に「伝わらない」こともしばしばあります。ではどうすれば“正しい”発声ができるのでしょうか? 「国語」の授業ではあまり触れられていないため、日本語ネイティブのあなたの方がかえって「?」と思うことでしょう。他言語母語話者向けの「日本語教育」は、日本語の音声についても体系的に教えています。日本語をひとつの「言語」として客観的にとらえるところに、新たな“発見”があるのです。
ドップラー効果と発声に共通点があった!?
「音」とは、空気など、音を伝える媒体の振動で生まれる物理現象です。身近な例を考えてみると、パトカーなどのサイレンは、近づいてくるときには高く聞こえ、遠ざかっていくときには低く聞こえます。いわゆる「ドップラー効果」です。また、細長い筒の中に水滴を落としたときに聞こえる「共鳴音」は、筒の中の水位が上がるにしたがって高くなります。共通点はどちらも「同じ音源の音が違って聞こえる」ということです。それはなぜでしょう。こうした日常的な現象も、実は私たちの発声と深い関係があるのです。
音声も「音」という物理現象
人間が声帯で出す音は「ブーッ」という音です。ではなぜ「あ」「い」「う」……のような音に聞こえるのでしょうか。ここには、「共鳴」という物理現象が関与しています。私たちは口の中の形状を瞬時に複雑に変えて、さまざまな「音声」を作っています。この事実を理解することで、例えば声楽家は、より美しい声を響かせられるのです。
「音声」も、「音」という身近な物理現象との結びつきがわかると、「なるほど!」と知的好奇心が刺激されます。
日本語学習者だけでなく、日本語ネイティブのあなたが日本語の音声を客観的に見つめ直すことは、実は自分自身を見つめ直すきっかけにもなり、さらには、ほかの言語を学ぶ上でも非常に役に立つはずです!
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武蔵野大学 グローバル学部 日本語コミュニケーション学科 教授 村澤 慶昭 先生
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