しわが消える? 分子の形を変えた「浸み込む」ヒアルロン酸

ガードが固い皮膚を突破できない
化粧品の成分としてよく使われている「ヒアルロン酸」は、体内にたくさん存在しています。大量の水分を含むことができる性質があるので、皮膚のハリを保ち、関節の動きを滑らかにするなどの働きがあります。そして、加齢とともに減少します。
皮膚の場合、それがしわの原因になります。減少したヒアルロン酸を補えればいいのですが、皮膚に塗るだけでは、表面の角層(死細胞が集まった層)にとどまって保湿するだけで、しわができている真皮の部分までは到達しません。皮膚にはもともと体の中に異物を侵入させないようにガードする働きがあります。分子が大きく、皮膚に浸み込みにくい水溶性であるヒアルロン酸は、角層の下まで浸透できないのです。
鎖状の分子を球状に
美容外科で行われている「ヒアルロン酸注入療法」は、注射で皮膚に成分を送り込むため医療行為にあたり、医師にしかできません。そこで、「塗るだけでしわ改善ができるヒアルロン酸」の研究が行われ、大きい分子のヒアルロン酸を角層の下の真皮まで浸透させる技術が開発されました。
ヒアルロン酸分子は鎖のように長い形をしています。これを丸めて球状にすることで、体積が小さくできることが発見されました。この基本技術は「ポリイオンコンプレックス法」といい、マイナスに荷電しているヒアルロン酸分子に、プラスに荷電している別の物質の分子をくっつけて中和すると、長いヒアルロン酸分子が縮んで丸くなるのです。
皮膚の深部まで届く
粒状のヒアルロン酸を生体の皮膚に塗ってみると、角層の中で、本来は肌に浸透しやすい脂溶性の物質が存在する部分に、水溶性のヒアルロン酸が入り込んでいることや、それが真皮まで到達していることが観察されました。しわ改善効果のある成分として、化粧品への活用が期待されています。
この技術を発展させて、現在、ヒアルロン酸の負電荷を中和するための正電荷を持った分子として「皮膚に良い作用を起こす物質」を使い、より美肌効果の高い成分や技術をつくる研究も行われています。
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佐賀大学 コスメティックサイエンス学環(仮称) ※2026年4月設置構想中 教授 徳留 嘉寛 先生
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