血管の内側にかさぶた? 出血しやすい? 新しい血液検査を作ろう

血管の内側にかさぶた? 出血しやすい? 新しい血液検査を作ろう

血管内の”かさぶた”が病気の手がかりに

ケガをすると皮膚の表面で”かさぶた”ができて血を止め、治ると”かさぶた”がはがれます。同じ現象は血管内でも起こります。しかし、血管の内側で”かさぶた”がはがれてしまうと細い血管では、詰まってしまいます。そのため、血管内の”かさぶた”はフィブリンという塊が血管の傷をふさぎ、血管がきれいに治るとフィブリンの繊維が溶かされて消えるのです。塊ができることを凝固、溶かされることを線溶(せんよう)と呼び、この現象は血液検査において重要なバイオマーカーになっています。なぜなら病気の中には、血液の凝固と線溶のバランスを崩すものもあるからです。凝固や線溶の異常がわかれば、こうした病気を発見しやすくなります。

光で血液を分析する

凝固の検査では、血液に検査用の試薬を入れて固まるまでの秒数が測定されています。秒数が正常値より遅い場合は、病気の可能性があると診断するのです。しかし、凝固までにかかった時間以外の情報がわからないことなどの課題がありました。
そこで考案されたのが、血液を通り抜ける光の量を分析する技術です。試薬を入れた血液に光を当てて、透過率の変化を探ります。すると最初は100%だった光の透過率が、塊ができたとたんに数十%低下するのです。さらに数学的な解析をすると、凝固速度や、固まる瞬間の凝固加速度も分析できます。この方法で、さらに正確に、多くの情報を手に入れられるようになりました。

溶けやすさはどう測る?

一方で、線溶に関してはまだ検査方法が確立されていません。線溶の様子が詳しくわかれば病気の早期発見や、薬の効果検証に役立ちます。そこで凝固後の血液に別の試薬を入れ、光を当てて測定すると、一度低下した透過率が再び100%に戻るタイミングがあることがわかりました。フィブリンが溶けて血液が元の状態に戻り、また光を通すようになるからです。この現象をうまく使えば、いつ線溶が起きたのか判断しやすくなるため、実用化に向けて試薬の改良や実験が現在も続いています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

天理大学 医療学部 臨床検査学科 准教授 松本 智子 先生

天理大学医療学部 臨床検査学科 准教授松本 智子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

血栓止血学、血液検査学

先生が目指すSDGs

メッセージ

血液検査といえば白血球や赤血球などのイメージかもしれませんが、それ以外にも血小板をはじめ凝固や線溶などの観点があり、それを深掘りする「血栓止血学」という分野があることを知ってもらえると嬉しいです。日本の血栓止血学の研究は世界でもトップレベルなので、一緒に学んでみませんか。
また、臨床検査技師という職業にも興味をもってほしいです。医療における縁の下の力持ちであり、研究でも医療現場でも活躍でき、多くの分野に携われます。
検査に必要なバイオ技術や情報解析も学べるので、きっとあなたの力になると思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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「自分を超えて、未来を拓く」~世界を知り、視野を広げ、社会に貢献できる人材に~
本学は1925年に天理外国語学校として設立され、2025年には創立100周年を迎えます。国際社会に開かれた大学として発展するとともに、学生同士はもちろん教員とも人間的なつながりを深めるための「少人数制教育」と「クラス担任制」で、学生一人ひとりの個性や理解度に応じたきめ細やかな教育を実践しています。 建学の精神に基づく、「宗教性」「国際性」「貢献性」という3つの柱を修め、社会の発展に寄与する人材を育成します。