品種改良と研究がもたらす、ミカン栽培のより良い未来

品種改良と研究がもたらす、ミカン栽培のより良い未来

ミカンの生産現場が抱える3つの課題

日本は世界の中でも果物の消費量が少ないため、国内での栽培面積は年々減少しています。加えて、果物の生産現場はさまざまな課題を抱えています。その中でも特に、日本で生産の多い「ウンシュウミカン」には大きく3つの課題があります。1つ目が、ウンシュウミカンの樹の「隔年結果性」という特徴です。ウンシュウミカンはある年に大量に実をつけると、翌年は樹が休んでしまい実ができません。そのため生産が不安定で、栽培には熟練の技術や経験を必要とします。2つ目が、おいしいウンシュウミカンをつくるために水はけのよい急斜面で栽培を行うことから、生産効率が低いことです。生産者の高齢化が進み、急斜面での生産が難しくなることも増えています。3つ目が、消費の低迷による価格低下です。

品種改良で生産効率や味のよいミカンを

ウンシュウミカンの課題を解決するために、カンキツ類の品種改良が重ねられてきました。その中でも1949年に誕生した「清見(きよみ)」という品種は、より生産効率の良いカンキツや、香りや味が良く、消費者に親しんでもらいやすいカンキツをつくり出す上で欠かせない存在です。通常のカンキツ類の種は、一粒から多数の芽が出てくる「多胚性」という特徴があります。一方、清見は一粒の種から1つの芽しかでない「単胚」です。多胚では品種改良のために交配をしても、どの芽が交配種なのかわかりませんが、単胚であれば確実に交配種ができあがります。

樹の健康状態を可視化し、生産の課題の克服へ

こうした品種改良に加えて、現在はカンキツ類の樹の健康状態を数値化する研究も進んでいます。カンキツ類の隔年結果性という特徴は、大量に実をつける年に樹木内の養分を使いすぎてしまい、翌年は養分不足で実をつけられないことが原因であることがわかっています。カンキツ類の樹の状態を可視化できれば、カンキツ栽培により多くの人が携われるようになります。その結果、生産効率が向上し、生産者の高齢化問題などの解決にも結びつくでしょう。

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玉川大学 農学部 生産農学科 教授 浅田 真一 先生

玉川大学 農学部 生産農学科 教授 浅田 真一 先生

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園芸学、果樹園芸学

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メッセージ

高校で学ぶ数学や地理、生物、化学といった科目は、普段の生活の中では役に立つ機会などないと感じているかもしれません。しかし、ひとたび「食」に目を向けてみると、その印象は大きく変わることでしょう。例えば、自分の食べているものが、どこでどのように作られて目の前の食卓に並んでいるのかと思いを巡らせてみてください。野菜や果物を植物として知るには生物学や化学の知識が必要ですし、効率的な流通の仕組みを考えるには経済の知識が欠かせません。農学という学門は、あなたの「食」から入り口が見える学問です。

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―8学部17学科がワンキャンパスに集まる総合大学!―「全人教育」の理念のもと“「人」を育てる”ことをめざす玉川大学は、8学部17学科の学生がワンキャンパスで学んでいます。61万㎡の広大な敷地には、各学科での深い学びに加え、学部学科の垣根を越えた学びの環境を用意。学外での体験型学修や、「使える英語力」を身につける「ELFプログラム」などの独自プログラムも実施しています。また、2020年4月に利用開始した「STREAM Hall 2019」では、農・工・芸術学部が学部の枠を越えた学びを展開します。