人間の知覚の「隙間」を狙え! アクティブセンシングの挑戦

見えない光で視線をとらえる
人間の体の状態や動きを計測する「ヒューマンセンシング技術」は、さまざまな分野で活用されています。その中でも視線計測は、自動車やヘッドマウントディスプレイに搭載され、注目されている技術です。高精度な計測を実現するために、人間の目には見えない近赤外線を利用する方法が開発されています。これは、虹彩が近赤外線を透過しやすい性質を持ち、瞳孔をより明確にとらえられるからです。そのため、視線の正確な計測が求められる場面では、可視光カメラではなく近赤外カメラが利用されています。この技術は既に実用化されていますが、大型化するディスプレイへの対応や近赤外光源の配置など、解決すべき課題も残されています。
知覚の隙間を突く
近赤外線は人間の目には見えないため、操作の邪魔になりません。このように、人間の知覚の隙間を利用してアクティブに働きかけることにより、違和感なく高精度な計測が可能になります。例えば、視覚の隙間を利用する技術の一例として、偏光があります。ディスプレイから照射される光は偏光によって特定の方向に振動しています。しかし、この情報は人間の目では知覚できません。そこで、目に反射した偏光情報を専用のカメラでとらえることで、ディスプレイと目の位置関係を正確に測定できるのです。
感じない振動で動きを読み取る
触覚の隙間を活用する技術として、人間が知覚できない高周波の振動を使って関節角度を測定する技術も開発されています。関節が曲がると筋肉が収縮して硬くなり、振動の伝わり方が変わることを利用するものです。人が感じない振動帯域を使うため、機器を装着していても不快感がなく日常生活で使えるのが特徴で、バーチャルリアリティやリハビリテーションへの応用が期待されています。「日常生活に溶け込むアクティブセンシング」により、人の新たな可能性が切り開かれようとしているのです。
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東海大学情報理工学部 コンピュータ応用工学科 教授竹村 憲太郎 先生
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