ヒマラヤの氷河はどれくらい融けた? 足と衛星で地形を探る

地球温暖化で氷河が融けている
地球温暖化は世界中に影響を与えています。例えば「氷河」は、雪が積もって固まることで作られるため、気温が上がって雨ばかりが降ると、氷が増えずに融けてしまいます。特にヒマラヤ山脈周辺は少し空気が暖まっただけでも雪が雨に変わる特徴があり、気候変動の影響がいち早く現れる地域です。そのため、ヒマラヤの氷河の融け方を探れば地球温暖化の影響を可視化でき、将来の地形変化の予測にも役立つと考えられています。
ヒマラヤの氷河を測量する
氷河の調査では「測量」の技術を使います。人工衛星で撮影した画像を分析する「デジタル写真測量」と、土地の上を実際に歩いてGPSで計測する「GNSS測量」などを継続的に行い、氷がどれくらい融けているかが分析されています。GNSS測量では緯度と経度、標高の情報を衛星から受信し、数秒おきに現在位置を特定します。すると標高が上がっている場所は氷が増えて、下がっていれば氷が減っているとわかる仕組みです。ただし氷河は広大で危険な場所も多いため、全範囲を歩くことはできません。そこで衛星画像を組み合わせ、歩いていない範囲の情報を補います。
GNSS測量は範囲が狭いものの、精度の高い情報を集められます。一方デジタル写真測量は広い範囲の情報が手に入るものの、精度はGNSS測量よりも低いです。両者の長所を組み合わせて短所を補い合うことで、可能な限り正確な情報を手に入れます。
氷の融けにくさを決めるのは?
調査が進むにつれて、氷河の融け方は気候だけでなく表面を覆う土砂からも影響を受けていることがわかりました。ヒマラヤの氷河は氷がむき出しになっている箇所だけでなく、土砂で覆われている箇所もあります。分厚い土砂に覆われている氷は太陽の熱が遮られて融けにくくなっていますが、土砂の厚さが薄い箇所は断熱効果が低く氷が融けています。土砂が何cm以上になると氷が融けにくくなるか、といった具体的な数値を突き止めようと、次の研究が試みられています。
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