講義No.10599 酪農・畜産学

家畜の健康を守って、持続可能な畜産を実現する

家畜の健康を守って、持続可能な畜産を実現する

畜産現場の日常的な課題

畜産に重大な被害を及ぼす家畜の伝染病である口蹄疫や鳥インフルエンザは有名でしょう。しかし、関係者の努力の成果もあり、このような病気の病原体は現在、国内に常在しているわけではありません。むしろ、畜産の生産現場で問題となっているのは、幼い鶏や豚がかかる風邪や下痢をはじめとする日常的によく見られる病気です。生産者はこのような頻発する病気の治療や、場合によっては病気の家畜を廃用することもあり、多大な負担となっています。また、こうした病気を予防・治療するために抗生物質が多用されると、耐性菌ができてしまい、治りにくくなることや異なる病気が発生する恐れも抱えています。

抗生物質に頼らず、家畜を元気にする

そこで、抗生物質に頼らず、家畜の健康を守るための研究が注目されています。その一つが飼料に混ぜる添加物の開発です。米焼酎の生産で有名な熊本県では、製造の際にできる「焼酎かす」を抗生物質の代替にできないかという研究が行われています。これは、人間がヨーグルトを食べて腸を元気にするのと同じ発想です。
また、畜産現場では毎年、相当数の牛が白血病と診断されています。白血病のかかりやすさには遺伝的な要素があることがわかっており、遺伝的メカニズムを解明する研究にも期待がかかります。

持続可能な畜産をめざす

近年、日本でもIT(情報技術)を取り入れた大規模経営をする畜産家が増えています。畜舎の温度や湿度、気温と家畜が食べる餌の量との関連や、出荷される肉量などをすべてデータで管理し、生産性を上げることに成功しています。このような工夫により、生産者は休暇も取りやすくなり、女性が働きやすい環境も実現できるでしょう。しかし、日本には家族経営型の伝統的な畜産に支えられてきた歴史があります。今後、両者のいいところを融合して新しい畜産のあり方を作り出していくことが重要となるでしょう。また、家畜を国内で生産し、国内で消費するためには、環境負荷を下げながら持続可能な畜産を実現することが必要です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 農学部 動物科学科 准教授 稲永 敏明 先生

東海大学 農学部 動物科学科 准教授 稲永 敏明 先生

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動物生理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

東海大学農学部は熊本県にあり、九州各地をはじめ、全国から動物好きな学生が集まって、日々、授業や実習、実験を行っています。
私たちは単に飼育技術を教えるだけではなく、動物を科学的・総合的に幅広い視野で見ることができる人材の育成をめざしています。自ら飼育ができるだけではなく、指導的な立場に立つ人、トラブルがあった時にも柔軟に対応し、常に新しい発想でチャレンジできるような人を育てたいと思っています。動物が好きな人はもちろん、そうでもない人も、東海大学農学部で一緒に学びませんか?

先生への質問

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東海大学は、全国のキャンパス(品川、湘南、伊勢原、静岡、熊本、阿蘇、札幌)に23学部62学科・専攻を擁する総合大学です。この大きな“受け皿”こそが、東海大学の魅力の一つです。社会に役立つ学びが集約された東海大学なら、あなたの興味や情熱に応える学びがきっと見つかります。