ヒロインは13歳 観客を引きつけるシェイクスピアのテクニック

ヒロインは13歳 観客を引きつけるシェイクスピアのテクニック

観客を引き込む巧妙な仕掛け

イギリス・エリザベス朝のころに活躍した劇作家シェイクスピアの作品は、400年を経た今も世界中で愛されています。その理由の一つに、その優れた劇作術があります。例えば『ロミオとジュリエット』は、イタリアから伝わった有名な物語が元になっており、ロンドン市民もよく知っていました。シェイクスピアはそれを利用して冒頭でネタバレをするという手法を用います。専門用語で「ドラマティックアイロニー」といい、観客は結末を知っているのに主人公たちはそれを知らない皮肉な状況が生まれます。それにより、観客は主人公たちに寄り添って応援したくなる効果を生み出し、より悲劇性が増すのです。また、ジュリエットの年齢は原作の16歳から13歳に変更されています。13歳は当時のヨーロッパでは子どもから大人への入り口という絶妙な年齢なので、変更により愛に殉じるジュリエットの純粋性を高めています。

ハラハラドキドキ飽きさせない

シェイクスピアはさらに、物語に複数の分岐点を設けることで観客を引き込みます。「ひょっとしたら助かるのではないか」と思わせる瞬間を作りながらも、主人公たちは常に不幸な方へと進んでいくことで緊張感を高めています。例えば、ジュリエットが飲む仮死状態になる薬の効き目の時間が明確に設定されているのも巧みな仕掛けです。観客はロミオが到着する時間がほんの少しずれていれば悲劇は避けられたと知り、ドキドキせずにはいられないのです。

普遍的な人間描写

同時代のほかの劇作家の作品と比べて、シェイクスピアは物事の解釈を観客自身の判断に委ねるバイアスのない書き方で、人間の本質的な部分や心理を巧みに描き出しました。それは老若貴賤(きせん)を問わず、そして何百年たっても変わらない普遍的なもので、そこに彼の作品の魅力があります。
文学には決まった答えはなく、それぞれが感じるものが答えです。シェイクスピア劇を通して私たちは感情を豊かにし、さまざまな人生観に触れられるのです。

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東海大学 文学部 英語文化コミュニケーション学科 教授 神山 高行 先生

東海大学文学部 英語文化コミュニケーション学科 教授神山 高行 先生

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近代英文学、英語圏文学

先生が目指すSDGs

メッセージ

シェイクスピアは何百年たっても変わらない人間の本質を劇にのせ、数々の名作を生みだしました。戯曲は本と映像とでは違う魅力があるので、両方を楽しんで、得られる情報や印象の違いを比べてみるのもよいでしょう。多感な高校生の時期は、さまざまなことを吸収できる貴重な時です。自分の好みや適性にこだわらず、興味を持ったことには何でもチャレンジしてみてください。可能性に満ちたこの時期を大切に、多くの文学体験を通して感性を豊かにしていってください。

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