気象現象を画面上に立体表示する気象情報可視化ツールの開発
気象は立体での理解が必要
天気予報で一般的に使われる天気図は、地上付近の気象現象を表しています。さらに詳しい気象状況を調べるには、上空の特定の高度や気圧面における気象現象を表した高層天気図が用いられます。気象現象の立体的な姿をイメージするには、この一定の高さごとの断面である天気図を頭の中で縦方向に重ね組み合わせていく必要があります。
「Wvis」で立体的に表示
気象庁では、数値予報という気象に関する情報を毎日提供しています。これは、地球の大気を立体の格子に区切り、格子点ごとに気温や風などを計算したものです。この情報をコンピュータプログラムで読み込み、画面上で立体的に表示するものが「Wvis(ダブルヴィス)」という気象情報可視化ツールです。これで、頭の中で天気図を組み合わせなくても、画面上に表示された立体的な台風や前線などをあらゆる側面から眺められます。
例えば、台風は地上付近だけの気象現象ではなく、上空まで続く立体的な構造をしています。台風の周りにある温かく湿った空気は中心付近に吹き込み、その風が中心に集まります。集まった風は行き場を失って上昇し、上空の冷たい大気に冷やされて雲ができます。そのため、台風の中心外側には「スパイラルバンド」と呼ばれるらせん状の雲が伸びていくのです。台風が接近し始めると雨が強まったり弱まったりするのはスパイラルバンドの影響です。
ジェット気流を把握する
このツールは、航空機の運航支援に活躍します。航空機はどのルートでどの高さを飛ぶかの判断が、速さや燃料の消費に影響しています。また上空のジェット気流の周囲には乱気流が起きやすいことから、安全面でも現況の気象情報の把握は欠かせません。Wvisなら、一目で状況がわかるように、航空機の航跡と立体気象図を重ねて表示できます。さらに、航空機事故の際は必ず気象の解析が行われますが、山間部などでは観測データがない場合もあります。そのような場合にはWvisで状況を再現して可視化し、原因の推測に活用することもできるのです。
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東海大学 工学部 航空宇宙学科 航空操縦学専攻 教授 新井 直樹 先生
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