ドレミの音階とキリスト教の関係? 西洋音楽の起源・グレゴリオ聖歌
グレゴリオ聖歌とは
カトリックの典礼音楽として、グレゴリオ聖歌があります。これはラテン語の祈りの言葉にメロディーをつけた単旋律の音楽で、古代の遺産も受け継ぎつつ、中世まで長い時間をかけて育まれてきました。そのリズムは飛躍と休息からなり、風のうなり、波の動き、鳥の羽ばたきなど、自然のリズムが反映されています。フランスでは現在でもグレゴリアンの形式を守っている教会や修道院があり、神に捧げる祈りの歌を聴くことができます。日本でもグレゴリオ聖歌の愛好者は意外に多く、演奏会がときどき開催されています。
ドレミの階名の起源に
現在使われている「ドレミ」の階名は、西暦1000年頃、ベネディクト会修道士で音楽理論家のグィド・ダレッツォが考案したとされています。グレゴリオ聖歌には膨大なレパートリーがあり、聖歌隊歌手たちは覚えるのが大変でした。どのように教えたらいいか考えたグィドは、洗礼者聖ヨハネ賛歌の歌詞のはじまりがut(do)、re、mi、fa、sol、laとなっているのに一音ずつをあてはめて音楽教育にとりいれました。また、典礼音楽の旋律はもともと記憶を頼りに口伝で伝えられていましたが、音の動きを示すネウマという記号が生まれ、やがて四線譜に四角の音符を書き込んだ楽譜が考案されて、五線譜の起源となります。
フランク王国の統一にも利用された聖歌
8~9世紀にグレゴリオ聖歌への統一が行われる以前のフランスでは、地方や教区ごとに旋律や歌詞が異なり、その土地固有の聖歌も歌われていました。そのため別の地域に行くと祈りを共唱できない状況でした。そこで、ローマとの結びつきを強くしたフランク王国のピピン3世とその子シャルルマーニュ(カール大帝)は、西方キリスト教世界の王としてローマ式典礼への統一を図り、グレゴリオ聖歌の整備、統合、普及事業を推進しました。ガリアにおいては地方聖歌への愛着や誇りも強く、導入への抵抗もありましたが、グレゴリオ聖歌は徐々に浸透していき、精神的な国内統一にも用いられたのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 フランス語圏文化論 准教授 大須賀 沙織 先生
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