脳の司令塔・前頭葉を鍛える「脳トレ」とは?
前頭葉は人間らしさを保つ脳の司令塔
テレビや雑誌でもよくみかける「脳トレ」は、「脳力トレーニング」の意味で、本来は認知機能を改善し、記憶力や集中力などを鍛えるトレーニングのことです。主に事故や病気で脳にダメージを受けた人や精神疾患の患者さんを対象に実施されています。
人間の脳には、部位によってそれぞれ役割があります。その中でも前頭葉は、蓄積した情報や記憶を呼び起こす実行機能をつかさどり、いわば「脳の司令塔」の役割を果たしています。前頭葉を損傷したり、機能が衰えたりすると、頭の中に情報はあっても、それをうまく引き出せなかったり、言葉でうまく説明ができなくなったりします。創造性豊かに思考し、言葉を使って表現するという人間ならではの能力を発揮できるのは、この前頭葉のおかげなのです。
キーワードは「言語化」
「FEP(前頭葉・実行機能プログラム)」は、前頭葉の働きが低下した人たちに特化した脳トレプログラムです。もともとは統合失調症の患者さんを対象にした認知機能改善療法のひとつとして、オーストラリアで開発されたものです。ほかのプログラムとの大きな違いは「言語化」を重視した点で、言葉にして表現することを繰り返し、前頭葉を刺激していきます。
日本語は世界でもまれに見る複雑な言語で、表現が多岐にわたり難しいといわれています。そこで英語用に開発されたFEPを日本語向けに翻訳・分析し、より日本人に適したプログラムとして、臨床実験も行われつつ、FEPの効果の研究が進んでいます。
高齢者のリハビリや学習プログラムにも応用
前頭葉の障がいは、さまざまな症状を引き起こします。やる気や集中力の低下、会話機能の衰え、計画が立てられない、危機管理ができない、柔軟性が減少する、などがあげられます。FEPは現在、精神疾患の治療によく用いられていますが、脳を活性化させる「脳トレ」として、高齢患者さんのリハビリや、小・中・高校生など成長期の学習プログラムなどに、幅広い応用が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
札幌学院大学 心理学部 臨床心理学科 教授 大宮 秀淑 先生
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