電気を通す&光るプラスチックをつくる!

電気を通す&光るプラスチックをつくる!

プラスチックは電気を通さない

分子の中で、原子同士がお互いに1個ずつ電子を出し合って共有結合すると「単結合」、2個ずつ出し合うと「二重結合」と呼ばれます。単結合の電子は移動しませんが、二重結合では2個目の電子が少しですが動きやすい性質があります。
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンなど、身の回りに使われるプラスチック類は、電気を通さない「絶縁性」を持ちます。これらは炭素を含む有機高分子化合物で、炭素同士が鎖のようにつながった構造です。電気を通さないのは、炭素原子と炭素原子との間がすべて「単結合」でつながっているからです。

電気が流れるプラスチックもある

しかし高分子化合物でも、炭素同士の結合が「単結合」と「二重結合」を交互に繰り返しながらつながっている「π共役高分子」だと、電気を通す性質が現れます。これを「導電性高分子」と呼び、半導体部品などに応用されています。
単結合と二重結合が交互に並んでいると、動きやすい電子が隣の単結合に移動して二重結合になり、結果としてポリマーの鎖全体を電子が動き回りやすくなります。ただ、動く電子が多すぎても電子の渋滞が起こって電気が流れないため、そこに「ドーピング」といって、電子を奪う働きをする別の物質を少し入れて電子を引き抜くことで、電圧をかけた時に電子の流れがスムーズになり、電気が流れるようになります。

新しい導電性・発光性高分子をつくる

また、π共役高分子には、エネルギーを与えることで蛍光を発する性質を持つものもあり、ディスプレイなどに応用されています。こうした導電性や発光性の性質は原料となるモノマーの構造の電子的な性質に基づきます。モノマーの多くは芳香環と言われる6角形の構造を含んでいますが、芳香環同士をつなげるには工夫が必要です。その一つとしてノーベル賞の受賞対象になった「クロスカップリング」と呼ばれる優れた合成技術が使われています。この技術を用いることで、目的に応じた導電性・発光性高分子を自由自在につくることが可能です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

茨城大学 工学部 物質科学工学科 教授 福元 博基 先生

茨城大学 工学部 物質科学工学科 教授 福元 博基 先生

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高分子化学、有機化学、材料化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

世の中に役に立つ(かもしれない)「長いもの」(高分子)をつくっています。工作のようにのり(結合の生成)とはさみ(結合の開裂)を巧みに使いこなして「世界初の高分子」をつくります。分子レベルで化学結合をつくったり切ったりすることで、自分の思い描いた新しい物質を生み出せるところが化学の魅力です。合成したプラスチックが鮮やかに蛍光を発するのを見た瞬間、いつも感動を覚えます。分子レベルで物質をつくり出す楽しさが少しでも伝わればうれしいです。

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茨城大学は、人文社会、教育、理、工、農の5学部からなる中堅的地方総合大学です。校地は水戸・日立・阿見の3地区に分かれており、各キャンパスとも学生を中心とした環境づくりを進め、教育研究施設の充実を図っています。幅広い教養教育と高度の専門教育により専門家として自立できる人材を育成するため、学部・大学院にて多様な学習の場を用意し、各分野で世界を先導する研究活動を推進しています。