かつてのハッカの名産地を最新のテクノロジーで復活させよう!
世界のハッカの7割を作っていた北見地方
スッキリとした爽やかな香りをもたらすハッカ(ミント)は、食品や飲料、化粧品など、さまざまな製品に用いられています。北海道東部の北見地方は、かつてはハッカの世界シェアの7割以上を生産して輸出していたほどのハッカの名産地でした。しかしその後、ハッカの栽培やハッカ成分の抽出にかかる人件費などのコストの高騰により、北見地方でのハッカ生産は衰退し、今ではごく少量だけ生産が続けられています。
マイクロ波を使った新しい抽出方法
従来、ハッカの原油を抽出するには、ハッカを刈り取ってから10日から2週間ほど「はさ掛け」という方法で乾燥させ、その後、2時間ほどかけて水蒸気で蒸留するという工程が必要でした。こうした工程で要する作業時間と人件費を削減するため、電子レンジでも使われているマイクロ波を照射する方法に注目しました。
ハッカの葉の表面には腺鱗(せんりん)という小さな袋があり、この袋の中にハッカの原油が入っています。従来の工程では、ハッカを乾燥させて腺鱗を壊した後、水蒸気で油を取り出していました。新しい方法では、生のハッカにマイクロ波を当ててハッカに含まれる水分を温め、内部から水蒸気を発生させます。この新しい工程では、約10分という短時間で、従来の方法よりフレッシュな香りのハッカの原油が抽出できるようになりました。
地域の一次産業を支えるよりどころとして
ハッカの栽培に関しても、最近では、植物工場でより効率的に栽培する方法が研究されています。ハッカは栽培環境によって香りも微妙に変化するため、植物工場で環境をコントロールすれば、個性的な香りを持つハッカを栽培し分けることも可能になると考えられています。
こうした最新の技術の導入によって省力化と効率化がなされた新しい農業のスタイルは、過疎化や高齢化という課題を抱える地域の一次産業を支えていく上で、新たなよりどころとなると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
北見工業大学 工学部 地球環境工学科 先端材料物質工学コース 教授 村田 美樹 先生
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