次世代ディスプレイ実現のカギとなるランダムレーザー

次世代ディスプレイ実現のカギとなるランダムレーザー

大画面ディスプレイの映像で表現できる色域は狭い

大画面の液晶やプラズマディスプレイが普及し、臨場感のある映像を見ることが可能になりました。しかし、その映像は、色の範囲が実物よりもはるかに狭いのです。これは、ディスプレイで使用されている蛍光体やLED、ハロゲンランプの照明光では限られた色しか表現できないためです。
そこで注目されているのが、レーザー光です。レーザー光を光源として使うと、これらの光源よりもはるかに多くの色を表現できるため、現在のディスプレイよりもあざやかで美しい映像が可能になります。しかも、省エネルギーです。レーザー光は、次世代のディスプレイにとって注目の技術なのです。

レーザー光の欠点を超えるランダムレーザー

しかし、レーザーディスプレイには解決すべき問題点があります。レーザー光を通常の方法で作り出すと、たとえ白い紙に当ててもランダムな斑点模様が生じてしまいます。これは波形が整っているレーザー光ならではの、そしてレーザー光ならばさけられないものです。このパターンを「スペックルノイズ」と呼んでいますが、このノイズがあるためにきれいな映像を作り出すことができません。しかし、スペックルノイズが出にくいレーザー光を発生させる技術が開発されつつあります。「ランダムレーザー」の研究がそれです。
通常のレーザー装置は、全反射鏡と半透明鏡を向かい合わせに置き、その間に光を増幅する物質を入れた構造をしています。それに対し、ランダムレーザーは鏡を使わず、光を増幅する粉体状の物質を使用します。この物質に外部からエネルギーを与えると、発生した光は粉体の中をジグザグに進むことでどんどん明るくなって外に出てきます。生まれる光は普通のレーザーと違い、いろいろな場所からいろいろな方向にとびだしていきます。この装置では、スペックルノイズが少ない高輝度の発光を行うことができます。実用化にはまだ時間がかかりますが、ランダムレーザーの研究はディスプレイ発展のカギとなるでしょう。

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九州工業大学 情報工学部 物理情報工学科 教授 岡本 卓 先生

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あまり知られていないのですが、日本国内の電子産業の中で、光産業は売上金額ベースで4割以上を占めます。製品で言えば、ディスプレイ製品やデジカメ・プリンタなどの入出力製品、ブルーレイディスクやDVDなどの情報記録製品、太陽電池、さらにセンサーや計測機器など幅広い領域にわたっています。しかも、電子産業全体は横ばいなのに、光産業は急速な伸びを見せています。ただ残念なことに、光産業に関わる研究者は足りないのが現状です。将来性が十分なだけに、多くの若い人に関心を持ってほしいですね。

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「情報工学」は、高度情報化社会の進展の中で、ますます必須知識・ 技術となっています。九州工業大学情報工学部は1986年 に創設された日本初、現在も国立大学法人で唯一の情報工学部で、2016年に創設30周年を迎えました。知能情報工学科、電子情報工学科、システム創成情報工学科、機械情報工学科、生命情報工学科の5学科があり、情報工学の学びを軸としつつ、各学科の応用分野に対する教育研究を進めています。特に、教育システムは、全学科がJABEEに認定され、世界的に通用するものであることが保証されています。