量子コンピュータ実現に導く超大規模量子もつれの実現
「量子テレポーテーション」の活用
ミクロの世界である量子には不思議な性質があります。それは、1つの光子(フォトン)を2つに分裂させると、片方の光子に与えた影響が、離れた場所にあるもう一方の光子にも瞬時に現れるという現象です。この2つの光子を「量子もつれ」の状態にあると言います。
量子もつれにある片方の光子の「様子」を「情報」ととらえると、瞬時にもう片方の光子も同じ情報を持つことになります。これが量子テレポーテーションです。そして、量子テレポーテーションを駆使することによって、従来とは比べものにならない超高速の「量子コンピュータ」が可能になるのです。
空間から時間領域への転換
量子コンピュータが可能になるためには、量子もつれの状態を大規模に引き起こさなければなりません。
その革新的な解決策が、「時間領域多重化による超大規模量子もつれの生成」です。それまでの手法では、量子もつれを大規模に行う(多重化する)には広い空間が必要で、実験装置自体の規模の拡大が避けられず、限界がありました。そこで、空間的にではなく、時間的に多重化する、つまり同じ場所で時間を少しずつずらして量子もつれを繰り返し起こさせる装置が、世界に先駆けて日本で開発されました。それによって、それまで14量子間のもつれが最大だったところを、1万倍以上にすることができたのです。
飛躍的なエネルギー効率が、地球を救う!?
量子もつれの大規模化の成功は、量子コンピュータの実現に向けての大きな一歩です。量子コンピュータは、現在のスーパーコンピュータより桁違いに高速になり、より大規模な計算をより短時間にこなすだけでなく、エネルギー効率も飛躍的に高まります。地球温暖化の一因には、ITによる情報爆発が引き起こしている莫大な量のエネルギー消費があります。量子コンピュータやそれにともなう通信技術による大規模な省エネは、温暖化が進む地球の救世主になる可能性も秘めているのです。
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