迷うのも後悔するのも「人間だから」

迷うのも後悔するのも「人間だから」

迷わずに判断できたら

人生は判断の連続です。特に大きな問題のとき、的確な判断をズバッと下せたら、と思いませんか? 迷いも見せず、素早く判断し、決して後悔しない……そんな人を見たり話を聞いたりすると、そうなれたらとだれしも思うのではないでしょうか。悩みの多い年頃であるあなたなら、なおさらでしょう。
あるベテラン消防士のインタビューで、極限の火事の現場に踏み込んで次の行動を決めるときに、数ある選択肢をどう評価しているかと聞かれて、「評価なんてしない。なすべきことは自ずとわかる」と答えたそうです。豊富な経験を積めばそんな境地にさえ至れるのです。
そんな人間の判断には無意識が大きく関わっていることが現在ではわかってきています。しかし、無意識に任せてしまえば万事片がつくわけではありません。無意識には落とし穴もあります。

心理の癖を知る

クレーンゲームをしていてなかなか景品が獲得できないとき、「いくつも100円玉をつぎ込んだんだから元を取るまではやめられない」という気持ちになりがちです。もし次に景品が取れたとしても、それで今までの失敗が帳消しになるわけではないのに。今まで費やしてきた努力をあきらめきれない、という心理はあなたにも覚えがあるでしょう。
これは「埋没コストの錯誤」と言いますが、このような落とし穴はたくさんあります。人間の意思決定の癖を知ることで、「無意識はこちらを選べと言っているが、これはいけない道だ」と理性に助けられて落とし穴に落ちないようにすることができるでしょう。
人間には「判断力を高めたい」という欲求があります。しかし、完璧にうまくいくことなんてありません。後悔したくない気持ちはわかりますが、「あのとき別の選択肢を選んでいたら」とイメージする力があるから後悔できる、とも言えるのです。そして、それができるのは人間だからです。迷いも後悔も、人間だから感じるものです。そう知って、割り切ることも重要でしょう。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 教授 長瀬 勝彦 先生

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経営学

メッセージ

人間、過去のことも現在のことも決められません。また、他人のことも決められません。でも逆に言うと、自分の未来だったら自分で決められるのです。これはとても素晴らしいことです。人生、思惑がはずれてがっかりすることも多いですが、失敗があるから成功が楽しいのです。そして一所懸命やって失敗したことなら、必ず自分の力になるし、充実感も持てるものです。どの選択肢を選べばいいか迷うこともありますが、実は意思決定した時点では何もまだ決まっていません。重要なのはその先の努力です。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。