建築計画の観点から見る、高齢者施設の工夫
建築計画の大切さ
「建築計画学」という分野では、建物が実際にどのように使われているかを調べて、使われ方に応じた、よりよい建築をめざします。特に、不特定多数が利用する大きな建物は利用者の声が反映されにくいため、きちんとした調査をし、建築計画を立てることが重要になってきます。
高齢者施設の設置基準とニーズのギャップ
例えば、高齢者施設の場合、厚生労働省の定めた施設設置基準がありますが、それが常に利用者のニーズと合致しているとは限りません。高齢者施設は、通う施設(通所施設)なのか、泊まる施設(短期入所施設)なのか、住む施設(居住施設)なのかで分かれています。しかし、そのように施設が分かれていることによって、不便なことも出てきます。最初は通う程度でよかったとしても、年月がたつと利用者のニーズが変化し、泊まったり住んだりする施設が必要になることがあるからです。その場合、利用者は別の施設を探さなければなりません。しかし、環境やスタッフが変わることなく、同じ施設を利用できた方が、利用者にとっては安心なはずです。
ユニークな施設を調査する
実際にそのようなニーズに応えて、制度の枠を超え、「通う・泊まる・住む」というすべての機能をそろえた施設があります。そのような施設は、構造や使われ方がユニークです。調査すると、例えば、昼と夜では空間を使い分けていることがわかります。昼間はリビングでみんなが集い、夜は比較的プライベートな空間で夕飯を食べられるように工夫されているのです。また多くの施設がいすに座る方式を採っているのに対し、そこでは床に座る方式も選べるようになっています。このように目線を低くすることによって、利用者は家庭的な雰囲気のなかで落ちついて生活することができます。
先駆的な試みをしている施設を調査し、その建物がどのように使われているかを調べることによって、よりよい建物とは何かを考えることも建築計画の役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 建築学科 教授 竹宮 健司 先生
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