農業経営は「どんぶり勘定」? 農業経営の活動成果をどう把握する?

自然が関わるからこその難しさ
何かを生産しそれを管理して流通に乗せ、販売を行うという一連の流れは、ビジネスにおいてごく一般的なものです。そこでは常に「数字」が明確になっています。ところが農業においては、簿記会計による数字の管理がなされていないことが多いのです。企業であれば、経理など役割分担された部署があり、そこが責任を持って業務を行うのに対して、日本の農家の多くは小規模な兼業農家で、何もかも自分たちで行う必要があり、そこまで手が回らないのです。また、例えば、製造会社では材料と製品の生産量の関係はある程度安定していますが、農業はそうではありません。簿記がもともと工業や商業を対象として作られたものなので、農業のこうした特徴を反映しにくいのです。
簿記・会計の役割の拡張
農業の特徴を反映できるような簿記会計ツールの開発とその普及が重要な課題です。また、近年、簿記や会計の役割や機能は拡張してきています。簿記・会計は企業や経営の活動の結果を記録します。これまでの簿記・会計が扱ってきた活動は「商品の売買やお金のやり取り」だけでした。しかし、最近では企業や経営の商取引以外の活動に着目し、環境保全活動や社会貢献活動の成果を数値化・貨幣換算して簿記や会計の結果に組み込むことが試みられるようになってきています。こうした取り組みによって企業や経営の活動の総合的な成果を把握することができるようになります。SDGsや環境保全が注目されています。簿記や会計はそうしたものとは縁がないように見えますが、実はそうした領域の問題を考える際にも役立つのです。
日本の農業と食を守るために
日本の農業と食を守るためには、農業経営の維持・発展が不可欠です。そしてそのためには、その活動の内容や成果を正確に把握する必要があります。簿記・会計は「究極の計算ツール」とも言われています。商取引だけでなく、さまざまな活動の成果を把握することで、最前線の課題解決にも貢献できるのです。
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先生情報 / 大学情報

龍谷大学農学部 食料農業システム学科 教授香川 文庸 先生
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農業経営学、農業会計学先生が目指すSDGs
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