目の付けどころがスゴイ!哲学界のコペルニクス!デビッド・ヒューム
ニュートン的手法で、人間の心の動きを科学
科学的に自然現象を探究し解明したニュートン。同じように科学的に人間の本質や心の動きを解明しようとしたイギリスの哲学者、デビッド・ヒュームがいます。
石が飛んできて、ガラスを割ったという現象を考えてみましょう。ヒュームは、石が飛んできた事象と、ガラスが割れた事象は、別のこととしてとらえるべきであると考えました。
「12時を指す時計」と「12時のサイレンが鳴ること」に、因果関係がないことと同じく、この2つの事象の因果関係は、客観的に実在しない、としたのです。もっとわかりやすく言えば、この現象をアニメーションで描くとき、石が飛んでくるシーンと、ガラスが割れたシーンは、まったく別に製作し、フィルムでそれをつなげただけなのだと見れば、理解できるでしょう。つまり、その2つの事象を、原因と結果として、私たち人間の心が補い、つなげて理解しているだけなのだと、彼は考えたのです。
このように、彼は、人の心の作用の対象を「観念(=idea)」としてとらえ、それがどう動いて行くのかを探究することで、人間の探求をしていきました。
常識をひっくり返し、大学教授に落選したヒューム
そんなヒュームの考えは、18世紀のヨーロッパでは、大きな衝撃でした。それまでの哲学の常識をひっくり返す説として、当然、すんなりと受け入れられるはずがありません。コペルニクスが地動説を唱えた時と同じように、特に当時の宗教関係者から、大きな非難を受けました。スコットランドのエディンバラ大学の教授として推薦された際も、反対運動が起き、結局ヒュームは一生大学の教壇に立つことはありませんでした。しかし、そんなヒュームの理論も、次第に多くの人に受け入れられるようになりましたその結果、「もっとも尊敬すべき哲学者は?」というイギリスのあるアンケートでは、1位のマルクスに次いで、2位に彼の名前があがったほどです。ヒュームは哲学を語る上で欠かせない功績を残しているのです。
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