生きるってどういうことだろう? ~「死生学」から考える~
「なぜ生きる?」は、誰もが抱える苦しみ
私たちは人生のさまざまな場面で「生きること」の意味を考えます。家族や友人関係、健康に恵まれ、成績や地位も申し分なく、すべてが満たされて幸せに見える人でも、こころにぽっかりと穴が空いて、生きる意味や自分の存在価値が見い出せずに悩む人がいます。また、辛い人間関係や病気、死といった問題に直面して、「なぜこんなに辛い思いをしてまで生きなければならないのか」と苦しむ人もいます。このような、人間存在を根底から揺るがす苦しみ(こころの痛み)を「スピリチュアルペイン」と言います。これは誰もが持つ苦しみであり、人が生きる意味を発見し、豊かに生きること、QOLに深く関係しています。
苦悩を和らげる
不安感や不眠といった精神症状とは異なり、「生きていても仕方がない」「生きる意味がわからない」といったスピリチュアルペインに特効薬はありません。自分の持つ信条や信仰が生きる支えとなったり、また誰かが一緒に泣いたり笑ったりしてくれるだけで、苦しみが和らぐことがあります。一方で、他人からの励ましの言葉がさらに傷を深めてしまう場合もあります。苦悩を和らげるものは人それぞれ違います。苦しみにある本人が、自ら生きる意味を見い出していくことが大切です。
「死」を学ぶと、「生」の輝きが見えてくる
「死」を自分のものとしてとらえたとき、人は初めて「どう生きるか」という問いに向き合います。「死」は人生最後の大仕事です。「死」や「いのち」について考えるとき、科学的なものさしだけでは、そのすべてを見ることはできません。目に見えないもの(例えば、神仏を含めた人間を超える何かとの関係性、愛することや赦すことなど)に目を注ぐことが必要です。「死を含めていかに生きるか」を考える学問、それが死生学です。生と死、死生観に関わる問題に対して、哲学や宗教のような難しい言葉でなく、医学や心理学のように人を切り分けて分析するのでなく、「人間をまるごと」とらえ、人生を問い直し、「いのち」を見つめ直す学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 人間福祉学部 人間科学科 教授 藤井 美和 先生
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