可能性を秘めた次世代材料「フォトニック結晶」
身近にあるコロイド
「コロイド」という言葉を聞いたことがありますか? この定義は少し難しいかもしれませんが、「分散相と分散媒からできているもの」で、もっと簡単に言うと「直径100ナノメートル程度の微粒子(分散相)が液体など(分散媒)の中に分散したもの」です。とっつきにくいと思うかもしれませんが、意外と身近に存在するもので、墨汁、インク、牛乳などがコロイドです。溶けている粒子をコロイドというのではなく、それが分散している液体も含めて、すべてがコロイドなのです。
最近では、コロイドを用いたフォトニック結晶が作られるようになりました。フォトニック結晶とは、光の波長程度の周期で屈折率が変化する結晶です。フォトは「光」という意味です。光の伝搬を制御できるため、光ファイバーなど、光通信技術に役に立ちます。
医療用にも使える次世代素材
水の中に二酸化ケイ素(シリカ)の球を分散させると、コロイドができます。粒子と粒子を強く反発させると、きれいに並び、コロイド結晶ができます。粒子はそれぞれの粒子から等間隔で遠ざかろうとし、その結果規則正しく並びます。これがフォトニック結晶です。水の中にキラキラときれいな結晶が見えるのですが、振動を与えると簡単に粒子の配置が崩れてしまうので、このままでは実用に向きません。そこで高分子のゲルで液体を固め、固体にします。ゲルとは、コンニャクや寒天など、高分子が網目を作った状態の物質です。
固体にしたことで、使い道が広がりました。加熱成長法という新しい方法を使えば、1×3cm以上の大きな結晶を作ることができます。材料として使えるようになれば光学関係の装置を作るときに役に立ちます。また、もともとが液体なので、水を入れて濃度を調節することも可能です。今後は、どの波長の光をどれぐらいの割合で吸収するかを測る「分光光度計」をコンパクトなサイズのものに改良するほか、病気の診断の試薬として使用するなど、フォトニック材料の可能性は大きく広がっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
名古屋市立大学 薬学部 教授 山中 淳平 先生
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