いつも何かに注意を向けている
注意も発達する
何かに目を向けていても、心の中では違うことを考えていることがあります。大人は目の動きをともわなくても注意を払うことができます。これは、生まれてすぐの赤ちゃんにはできません。生後6カ月ぐらいから徐々に、目の動きと関係なく注意を払うことができるようになるのです。
「ドラエもん」には、違和感がある
「ドラエもん」と書くと、文字の表記に違和感があります。正しくは「ドラえもん」です。何気なく「ドラエもん」を見ると、はっきりとはわからなくても“何かヘンだな”と感じます。一文字ずつを、ひらがなやカタカナと意識しているのではなく、形態として見ているからです。見慣れている形と違うと違和感があり、脳はすぐに気づきます。逆にいうと、わたしたちは、慣れているものにはほとんど注意を払わず、無意識に近い感じで処理しています。日本人など漢字を使っている文化圏では、特に単語を形でとらえる脳のルートが発達しています。脳の発達には、文化や環境が影響を及ぼします。
注意の向け方は変わる?
アメリカ人も日本人も、生まれた時には大きな違いはありません。獲得した母語や育つ環境によって影響を受け、注意の向け方も違ってきます。例えば、わずかに違う2枚の写真を見せると、日本人は背景の違いに気づきやすい傾向があり、一方、欧米人は画面の中央にあるものの違いに注意を向けることが多くなることが報告されています。育つ環境によって、情報の処理の方法も異なり、注意の向け方も文化によって変わってくるのです。
つまり、人によって注意の向け方が異なると言えます。そして、例えば同じような悲しい目にあっても、落ち込まずにいる人と、ひどく落ち込んでしまう人がいるのは、注意の向け方が人によって違うからだと考えられています。注意をうまくコントロールすることはこころの健康にもつながるのです。注意の操作は、うつ病などの認知行動療法に取り入れられています。
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先生情報 / 大学情報
名古屋市立大学 人文社会学部 教授 中川 敦子 先生
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