建築と大工さん
大工さんもさまざまな種類がある
一言で「大工さん」と言っても、それは「医者」と言っているようなもので、お医者さんにも、内科、外科とさまざまなお医者さんがいるように、大工さんにも多種多様な専門分野があります。いわゆる木造建築をする大工さんや、神社仏閣の建築や補修をする宮大工さんがいます。これ以外にも例えば、コンクリートの建築物を造る時に、木で型枠を作って、それにかなりの圧力をかけてコンクリートを流し込みますが、この時、コンクリートの型枠を作る型枠大工さんもいます。屋根、サッシ、コンクリート、電気工事、金属と実に多様な職業の総称として「大工」という名前が使われているようです。このように、さまざまな人の手を借りて建築はできているのです。
木造建築大工さんのワザ
建築家は、図面を描いて、その通りに施工するように依頼します。その後、図面通りに施工されているかどうかチェックし監理します。もし、チェックしたところが違っていたら、仕事をやり直してもらわなければなりません。一方で、図面通りに造ってもいけない時があります。図面ではなくその主旨を理解して造ることが重要です。
一例として、ある木造住宅を造っている時に、内装材に2ミリだけ隙間をあけて、目地を作る箇所がありました。図面は、目地を床から天井までずっと2ミリ間隔で平行に引いています。ところが大工さんは、天井の方を少し開いて作っていました。「なぜ図面通り平行にしないのですか?」と確認したら、「人間の目は遠く離れたものほど間隔が狭くなって見えるので、もし平行に貼っていくと先すぼまりに見えてしまう。平行に見えるようにワザと間隔を広げて補正しているのです」と言うのです。そして、完成後、普段使う位置から目地を見ると、確かに平行に見えました。図面の主旨を読み込み、2ミリであることが大切なのではなく、平行に見えることを優先したのです。これこそが、大工さんの仕事なのです。
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名古屋市立大学 芸術工学部 准教授 久野 紀光 先生
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