講義No.02275 生物学

進歩するRNA研究

進歩するRNA研究

翻訳が遺伝情報RNAを消去する

分子生物学で最も重要な原理は「セントラルドグマ」です。DNAの遺伝情報がRNAを介して、タンパク質の合成を指令する、という遺伝情報の流れを表す原理です。
生物の授業で習うと思いますが、DNAは遺伝形質を記録した遺伝子として、自己複製により同じDNAを作ります。また、DNAの遺伝情報を読み取って、核の中でmRNAが作られます。これを「転写」と言います。mRNAは遺伝情報を運ぶ大切な役割を担っています。mRNAは細胞質へと出て行き、リボソームがmRNAの情報のもとにアミノ酸を結合してタンパク質を作ります。このプロセスが「翻訳」です。
翻訳が終わってタンパク質ができてしまえば元の情報(mRNA)は不要になります。2003年に、翻訳の終結がmRNAの分解を引き起こすことが発見され、2007年にその分子機構(mRNA分解開始の分子機構)が解明されました。翻訳が終わるということがmRNA分解の引き金となっていたのです。

意外と少ない遺伝子の数・意外と多いRNA

2003年にはヒトゲノムが解読されるという画期的なできごとがあり、遺伝子の研究は大きく進歩しました。このときヒトの遺伝子の数は、約2万2千と推定されました。
当初予想されていた数よりも少ないものでした。ハエとあまり差がありません。ヒトはハエよりも複雑な構造をしているはずなのに意外です。では、両者の違いはどこに起因するのでしょうか? それはRNAです。ヒトゲノムの解析から、ヒトにはタンパク質に翻訳されない「ノンコーディングRNA」が多数存在することが明らかになったのです。これら膨大な数のRNAが何をしているのかは不明な点が多いのですが、翻訳やmRNA分解、転写にはたらき、遺伝子発現のより高度な調節を可能にすることで、ヒトのような生物の複雑さ、人間らしさを支えていると考えられるようになってきています。2006年にはRNAに関する研究でノーベル賞受賞者が2組も出ました。今、RNA研究が注目を集めています。

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先生情報 / 大学情報

名古屋市立大学 薬学部  教授 星野 真一 先生

名古屋市立大学 薬学部 教授 星野 真一 先生

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メッセージ

研究は思ったような結果がすぐには出ないことも多いので、研究者として忍耐強さ、ねばり強さを持った人がむいています。さらに言えば、自分なりに常に疑問を持ち、問題意識を抱いている人がふさわしいといえます。いかに疑問を解決するか自分で考え、問題解決能力を身につけた人は伸びていきます。自然科学が好きで、探究心が旺盛な人なら、薬学部に来ると幅広く学問に触れる機会があるので必ず満足できると思います。薬を作って、多くの人を救いたいという志を持った人は、ぜひ薬学部をめざしてください。

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