「緑」のコーヒーが高評価を得たのはなぜ?

「緑」のコーヒーが高評価を得たのはなぜ?

革新的な商品の明暗

今では当たり前のように使われているiPhoneですが、発表されたときは世界中が衝撃を受けました。通常、高機能な製品は、限られた人しか興味を抱きません。しかしあえて電話として売り出したことで、老若男女を問わず受け入れられました。一方で1992年に発売された透明なペプシは消費者に受け入れられず、1年もたたずに販売中止となりました。「ペプシが透明」ということに対する違和感が根強かったからです。

意味付けの重要性

透明なペプシは、「天然水から作られたペプシ」として売り出せば成功したかもしれません。ペプシと透明という組み合わせには違和感がありますが、天然水と透明という組み合わせは自然だからです。革新的な商品を出すときは、消費者が持つイメージも考慮して適切な意味付けを行うことが重要です。
意味付けの事例として、3色のビタミン入りコーヒーを作り、消費者の反応を見た実験があります。従来のコーヒーのイメージが強い黒は評価が低くなりましたが、緑や赤のコーヒーでは評価が高まりました。緑や赤は野菜を想起させ、ビタミンが入っているというイメージにつながりやすいからだと考えられます。

売れるものを作るマーケティング

マーケティングは売り方を考えるだけのものではなく、「売れるものを作る」という役割を担っています。商品自体に魅力がなければ、売り方を工夫しても効果は出ません。消費者のニーズを把握し、買いたくなるような商品を作るところからマーケティングは始まるのです。
そのためにモニター調査やアンケートなどさまざまな方法で市場調査を行います。インターネット上のアンケートもそのひとつですが、信ぴょう性の高い回答が集まりにくいという問題点もあります。売り手側はポイントなどの謝礼を出すことがありますが、謝礼欲しさの回答であるために精度が高まらないケースもあります。まず取り組む市場調査もまた、簡単ではないのです。

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東京大学 経済学部  教授 阿部 誠 先生

東京大学 経済学部 教授 阿部 誠 先生

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経済学、統計学

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メッセージ

マーケティングはセールスだけを指す言葉ではなく、「売れるものを作る」という考えが基盤にあります。売り手と買い手、双方にメリットがある価値交換の仕組みを作るためには、相手の立場になって考えることが大切です。つまりマーケティングとは「愛」なのです。
また消費者の立場でも、売り手がどういう心理を利用して物を売っているのかを理解すると、広告に踊らされない自制心などが身につくでしょう。あなたも1人の消費者ですから、マーケティングの知識が生かせる場面は多いと思います。

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東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。