ウシの心理を知ろう
「人と動物の関係学」とは?
「人と動物の関係学」とは、人が動物と身近に接することによる心理学的な影響を、人側、動物側それぞれから分析していく学問です。1970年代あたりから、特に動物との関わりが人間の健康にどう影響を与えるかという観点から始まりました。ペットの癒やし効果という形で取り上げられる「アニマルセラピー」もこの一種です。
例えば、小学校でヒツジやヤギなどを飼って児童に接触させることによって、心理的な影響や日常生活での行動の変化などを観察する調査があり、児童の気分転換になることや不安の低下などが認められました。人間の脳のメカニズムとして、不安と嬉しい感情、緊張と食欲など、相反する感情や行動は同時に成立しないものですが、動物の存在によって不安や緊張が取り去られ、動物とのコミュニケーションで豊かな情緒が育まれたことは注目に値します。
一方で、人との関わりによる動物側のストレスについても注目されるようになり、動物心理学や動物研究などという形で発展してきました。
酪農における心理学の活用法
酪農もまた、人と動物の関係の一つです。家畜を飼っていくうえで、人はどんなことに注意すればいいのでしょうか?
まず家畜の気質における個体差を知ることです。子ウシを対象に、音などの刺激を与え、その刺激に対して接触するか回避するかの傾向を測定したところ、接触傾向のある個体、回避傾向のある個体と、ゆるやかな一貫性が認められました。遺伝子的な背景をはじめ、個体による差が明らかになったわけです。ウシの行動傾向を知ることで、ウシへの影響を考慮した飼い方を模索することができるのです。
酪農家たちに家畜動物への意識を調査したこともあります。ウシやウマを単なる生活のための道具と考えている人は少なく、家族のような存在、人なつこい存在ととらえている人が多いという結果が出ました。こうしたお互いの感情移入の効果も、動物のストレス軽減や健康に影響を与えるものとして、今後研究が進められていく分野と言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 教授 山田 弘司 先生
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先生への質問
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