ヒトの健康に役立つオリゴ糖 農産物中の含有量の変化を追う

ヒトの健康に役立つオリゴ糖 農産物中の含有量の変化を追う

ヒトが消化できないオリゴ糖が腸で活躍

農産物にはヒトの消化酵素で分解できない食物繊維やオリゴ糖が含まれています。それらが体に入ってくると消化されずに、腸の下部まで到達し腸の中に住んでいる腸内細菌の餌になります。腸の中でヒトに良い働きをしてくれる菌が増え、健康につながる効果を生み出します。

タマネギのオリゴ糖は貯蔵中に少しずつ減る

タマネギは貯蔵性が高い作物で収穫後、徐々に出荷されていきます。タマネギには、ヒトの健康に良い影響を示すフルクトオリゴ糖を含みますが、貯蔵中に少しずつ減っていきます。 またタマネギの品種によってフルクトオリゴ糖含量は異なります。この品種の違いや貯蔵中にフルクトオリゴ糖がどのように変化していくかやフルクトオリゴ糖を分解する仕組みを明らかにすることは、タマネギのフルクトオリゴ糖の減少しにくい品種やオリゴ糖の量の多いタマネギを作出することに繋がるでしょう。

あの「PCR」を使った実験も

コロナ禍で有名になった「PCR」は、医学研究や検査だけでなく、植物を使った農学分野の実験・研究にも使用されています。タマネギの生育・貯蔵中にフルクトオリゴ糖を増やしたり分解したりするのは酵素タンパク質です。この酵素タンパク質を作っている遺伝子の量を調べる時に、PCRを使用します。最近、アスパラガスを用いた研究で、この装置が使われました。春にアスパラガスが土から芽を出す時には根の部分にたまっているフルクトオリゴ糖を分解してエネルギーへと変化していきます。このフルクトオリゴ糖の分解に関係する酵素タンパク質の遺伝子が複数存在する可能性がありました。この複数種の遺伝子の量の変化を調べたところ、ある遺伝子が収穫に伴って増加していることがわかりました。このことから、アスパラガスの収穫に影響を与える遺伝子が明らかとなりました。

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先生情報 / 大学情報

酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 教授 上野 敬司 先生

酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 教授 上野 敬司 先生

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食品化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校の時、なんとなく「理科の先生」になりたいと思い、どこの大学の教育学部に進もうか迷っていました。担任の先生に相談したら「理学部や農学部で化学や生物をより専門的に学んで先生になるのもいいんでないかい」とアドバイスをもらいました。缶コーヒーを飲みながらどうしようかなと考えていたら缶に記載された成分表示に「デキストリン」と書かれて「これは何だろう?」と興味を持ったことから食品系・農学系の分野に進むことにしました。何がきっかけになるかわからないものです。日頃から周囲に関心を持って生活してみましょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

酪農学園大学に関心を持ったあなたは

北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。