とびっきりおいしい、しゃぶしゃぶを楽しむための牛肉の作り方

とびっきりおいしい、しゃぶしゃぶを楽しむための牛肉の作り方

日本と欧米、まったく違う牛肉の質と味

和牛と欧米の牛では、名前こそ同じ牛肉と付いてはいるものの、食べ物としての味わいはまったく違います。また、見た目はもとより、口に含んだときの柔らかさや風味までもが違うのです。
例えばステーキ。アメリカのステーキは一目見ただけでも筋肉もりもりで、実際にもかみごたえたっぷりです。これに対して日本のステーキはいかにもお上品で、しっとり柔らか。肉の味の違いはしゃぶしゃぶやすき焼きにしたときに、よりはっきりと出ます。肉のかたまりをごろんと焼いてかぶりつくようなステーキならともかく、薄切りにした肉のしなやかな食感と肉そのもののうまみを味わうような料理となると、完全に和牛の勝ちでしょう。おいしいしゃぶしゃぶやすき焼きを楽しむためには、少々値段が高くついても日本のブランド牛が一番となるわけです。では、和牛と欧米の牛は、どこが違うのでしょうか。

ビタミンコントロールがおいしさの決め手

決定的な違いは、牛の育て方にあります。欧米ではほとんどが放牧で、だだっ広い牧場の中で牛たちは、好きなように行ったり来たりして育ちます。青々とした牧草を腹一杯食べてのびのびと成長するのです。牛たちを自由に育てるのが欧米流と言えるでしょう。
これに対して、日本の牛たちは、それも高級なブランド牛ほど、徹底的な管理のもとで飼育されます。牛舎の中で人手をかけて、大切に育てられるけれども、散歩などはさせてもらえません。食事もきめ細かにコントロールされています。ポイントはビタミンAの摂取量で、これの血中濃度をぎりぎりに抑えるのがおいしい牛肉を作るための秘訣なのです。なぜならビタミンAが少なくなると、体内の脂肪が分裂しやすくなります。分裂した脂肪が肉の中にしみ渡って入っていき、これが肉のうまみになるのです。
ただしあまりにビタミンAを絞りすぎると、牛がダメージを受けます。そこで現在、牛の状態を光学的にチェックする機器の開発が進められています。

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先生情報 / 大学情報

京都大学 農学部 地域環境工学科 教授 近藤 直 先生

京都大学 農学部 地域環境工学科 教授 近藤 直 先生

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農産加工学

メッセージ

私は俗に言う「三ちゃん農業」、第二種兼業農家の長男として育ち、幼い頃は家族が農作業で大変な思いをしている姿を目にしてきました。そこで子どもの頃に考えたのが、農作業のできるロボット開発です。現在では農業ロボットの開発に関われるようになり、まだまだ人力作業も多くありますが、ロボットと名の付いた農業機械も増えつつあります。農業の担い手が減りつつありながらも、安心・安全な「食」が強く求められる日本だからこそ、農業関連の科学技術は大きく期待されています。

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