人々の移動手段を確保する交通「インテリジェンス」
過疎の町で声を聞く
北海道のほとんどの市町村では、少子高齢化で人口が減ったことから、公共交通を維持するために多額の補助金を投入しています。規制緩和で民間の路線バスの参入も自由になりましたが、撤退もまた自由になっているからです。
しかし、厳しい財政状況のため、地方自治体も簡単に補助金を投入できません。最近、交通計画の世界では、過疎交通の研究にも取り組んでいます。過疎の町を訪れ、地元の人の声を生で聞き、いろいろな情報を手に入れて、その町の公共交通のあり方を提案しています。そこに必要なのは、「インテリジェンス」の考え方です。
過疎地にむく「デマンド交通」
人口の少ない過疎地域では、沿線バスを毎日運行しても、乗客がゼロで走ることが少なくありません。そこで生まれたのが「デマンド交通」です。これは、予約が入った時だけ運行する仕組みで、デマンドバス(予約制バス)と呼ばれています。経費を節減して赤字を減らそうという発想です。
ほかには、乗り合いタクシーも登場しています。大型車両を使い、乗り合わせた人をそれぞれの家まで送り届けるシステムで、通常のタクシー料金よりも安く、バスより少し高い金額設定になっています。
また、住民がお互いに送迎しあう方法もあります。車を運転できる人が、近隣の高齢者を乗せてあげる仕組みですが、交通事故が起きた場合に誰が責任を取るかなど、実施に移すには問題が残っています。
人々の移動を支える学問
都心のまちづくりと交通の関係は、環境問題にどう対応していくかで、今後ますます重要になるでしょう。しかしそれ以上に、人口減少で打撃を受ける過疎地域の人々の足をどう確保するかが、さらに重要性を増すはずです。
そこには、ほかの工学分野のように最先端のメカニズムを生みだす華やかさはありません。しかし、昔から人々が移動してきた交通のニーズは、これからも人々がそこで生きていく限り、変わらず存在しつづけます。交通計画とは、そうした人々の生活を支える学問であり、社会に役立つ実感を得ることができるものなのです。
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