講義No.12847 酪農・畜産学

「おいしい」を科学でひもとく~お肉の秘密と可能性~

「おいしい」を科学でひもとく~お肉の秘密と可能性~

「おいしい」って何?

グルメ番組でよく聞かれるのが「ジューシー」や、「軟らかい」などというセリフです。人はどうしておいしさを感じるのでしょうか。例えば牛肉だと産地があり、霜降り肉と赤身肉があり、さまざまな調理法があります。ほかにも見た目や味付けなど、人が「おいしい」と感じるポイントはたくさんありますが、お肉のおいしい要素とは、一体何でしょうか。

お肉のおいしい要素

要素は3つ考えられます。1つ目は硬さや軟らかさ、2つ目は保水性です。水分が保たれていると、ステーキやハンバーグの切り口からジュワっと肉汁が染み出ます。一方でパサパサしたお肉はおいしいと感じられず、食感もいま一つです。3つ目が呈味(ていみ)成分です。食べ物をかむと舌の味蕾(みらい)が刺激され、味覚神経に電気信号が送られます。脳はそれをキャッチして味を認識します。こうしたお肉の状態を左右するのが、中に含まれるアミノ酸とpH(水素イオン濃度)です。pHは、生きている動物だと約7ですが、死ぬと5.5程度まで下がります。しかしそこから熟成させることで酵素が働き、タンパク質が分解されて硬かったお肉は再び軟らかくなるとともに、保水性が回復し、また呈味成分の代表であるアミノ酸が増しておいしくなります。

お肉の価値を高める

ジューシーで軟らかく、見た目も良いお肉は、タンパク質やpHのふるまいに何らかの手を加えることで実現できます。その手法を調べるのに、シカやイノシシといったジビエといわれる野生肉のタンパク質やpHも調査対象です。もし今、牛舎にいる家畜牛を野山に放ち、高コストのトウモロコシなどの輸入飼料ではなく、自然の草を食べさせ太陽の下でのびのび生活させれば、健康な牛が育つでしょう。ただ、今ほど十分な栄養が取れないので、お肉の面では肉の量もジューシーさもあまり期待できません。そこで究極の放牧である野生のシカやイノシシといった肉を調べ、牛で応用できれば、放牧の可能性はもちろん、お肉の価値が高まると期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

岩手大学 農学部 動物科学科(令和7年度から農学部 動物科学・水産科学科 動物科学コース所属) 准教授 村元 隆行 先生

岩手大学 農学部 動物科学科(令和7年度から農学部 動物科学・水産科学科 動物科学コース所属) 准教授 村元 隆行 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

畜産学、食品科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今、高校であなたはただ一つの解を導く訓練を重ねていると思います。一方大学は、誰も「これが正解」と言ってくれない問いに挑み続け、自分で勉強し続けるところです。それは研究を続けている私も同じです。大学は、あなたが主体的に学びを深められる場です。そこで今のうちから、疑問に思っていることをどうしたら明らかにできるだろうかと、少しずつで良いので考えておいてください。すると、それが自ずと将来入りたい研究室探しにつながりますし、自分に合った大学を選択するためのヒントになります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

岩手大学に関心を持ったあなたは

岩手大学は、人文社会科学部、教育学部、理工学部、農学部の4学部からなり、文理バランスの取れた総合大学です。
宮澤賢治も学んだ歴史と伝統、そして市街地ながら緑あふれるキャンパスは利便性も高く、落ち着いた学びの環境を形成しています。
また、全学部がワンキャンパスにあるため他学部の学生との交流も盛んで、学生の研究や就職などにも大きな効果をもたらしています。
大学HPでは、学部紹介やニュース、「岩手大学公式X」等で大学の魅力をお伝えしています。興味を持った方は是非ご覧になってみてください。