「おいしい」を科学でひもとく~お肉の秘密と可能性~
「おいしい」って何?
グルメ番組でよく聞かれるのが「ジューシー」や、「軟らかい」などというセリフです。人はどうしておいしさを感じるのでしょうか。例えば牛肉だと産地があり、霜降り肉と赤身肉があり、さまざまな調理法があります。ほかにも見た目や味付けなど、人が「おいしい」と感じるポイントはたくさんありますが、お肉のおいしい要素とは、一体何でしょうか。
お肉のおいしい要素
要素は3つ考えられます。1つ目は硬さや軟らかさ、2つ目は保水性です。水分が保たれていると、ステーキやハンバーグの切り口からジュワっと肉汁が染み出ます。一方でパサパサしたお肉はおいしいと感じられず、食感もいま一つです。3つ目が呈味(ていみ)成分です。食べ物をかむと舌の味蕾(みらい)が刺激され、味覚神経に電気信号が送られます。脳はそれをキャッチして味を認識します。こうしたお肉の状態を左右するのが、中に含まれるアミノ酸とpH(水素イオン濃度)です。pHは、生きている動物だと約7ですが、死ぬと5.5程度まで下がります。しかしそこから熟成させることで酵素が働き、タンパク質が分解されて硬かったお肉は再び軟らかくなるとともに、保水性が回復し、また呈味成分の代表であるアミノ酸が増しておいしくなります。
お肉の価値を高める
ジューシーで軟らかく、見た目も良いお肉は、タンパク質やpHのふるまいに何らかの手を加えることで実現できます。その手法を調べるのに、シカやイノシシといったジビエといわれる野生肉のタンパク質やpHも調査対象です。もし今、牛舎にいる家畜牛を野山に放ち、高コストのトウモロコシなどの輸入飼料ではなく、自然の草を食べさせ太陽の下でのびのび生活させれば、健康な牛が育つでしょう。ただ、今ほど十分な栄養が取れないので、お肉の面では肉の量もジューシーさもあまり期待できません。そこで究極の放牧である野生のシカやイノシシといった肉を調べ、牛で応用できれば、放牧の可能性はもちろん、お肉の価値が高まると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 農学部 動物科学科(令和7年度から農学部 動物科学・水産科学科 動物科学コース所属) 准教授 村元 隆行 先生
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