動物に教えてもらう動物のこと―動物目線の行動学―
動物たちの生き方を知る
野生動物を効果的かつ効率的に保全・管理するためには、彼らの行動特性を知る必要があります。しかし、野外で自由に移動する彼らを追跡して行動を調べるには、時間的にも労力的にも限界があります。例えば、多くの鳥類は繁殖を終えると「渡り」と呼ばれる長距離移動をします。そして、移動した先の地域で危機に直面することで個体数は減少します。
動物研究の基本は観察ですが限界があります。そこで、近年さまざまなセンサーを搭載した小さなデータロガーを動物に装着して行動を記録する、「バイオロギング」という手法が用いられています。環境や人為活動と関連して動物たちがどのように生活しているのか、彼ら自身に教えてもらうことで、動物目線で人との共存を可能にする環境づくりが可能になると期待されています。
ペンギンの個体数減少の要因を解明!
アルゼンチンに生息するマゼランペンギンは、近年個体数が減少傾向にあります。その理由として、非繁殖期のメスの死亡率が高いことが一因としてあります。そこで、ペンギンたちにデータロガーを装着することで、冬の間の彼らの移動を記録しました。その結果、オスとメスは非繁殖期に過ごす海域が異なっており、メスが利用する場所は漁業活動や船舶の往来、油田開発といった人間活動の活発な海域と重複していることが明らかになりました。では、なぜ利用海域が違うのか? その理由として、雌雄の体の大きさの違いに起因する餌資源をめぐる競合や水温と関連した代謝の違い、繁殖戦略の差異などが考えられています。
動物園や水族館での研究にも応用
動物園や水族館でもバイオロギング手法を用いた研究がおこなわれています。飼育動物の健康管理や福祉向上には行動観察が必要不可欠です。そこで、体の動きを記録する加速度データロガーなどを動物に取り付けることで、長期間かつ詳細に行動を記録することが可能です。彼らの行動をモニタリングすることで、より良い飼育環境を提供することが可能になると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
麻布大学 獣医学部 動物応用科学科 准教授 山本 誉士 先生
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先生への質問
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