国同士の約束事からSDGsまで 国際社会の未来を担う国際法
国際法は法規範である
国と国との関係を規律する国際法は、主に、すべての国が守るべき慣習法と、締約国だけが守るべき条約でできています。国内法と同様に、国際法は国家が守らなくてはならない法規範であり、政治的合意ではありません。ただし国内法とは異なり、国家に履行を強制することは必ずしも容易ではありません。法の違反に対して警察や裁判所が強制的に介入できる国内社会とは異なり、国際社会には中央集権的な権力機構が存在しないからです。国際連合は世界政府ではなく、国家が任意に加盟する国際組織であり、国際司法裁判所も紛争当事国が合意しなければ裁判を開けません。
国際法はいかにして守られるのか
しかし、国際法はよく守られています。そもそも国家は自国の利益になると考えて条約を締結するので、これを破れば自国の不利益につながります。また人権条約や環境条約では、締約国からの条約の実施状況に関する定期報告を受け条約機関が審査するなど、条約の遵守を確保するための仕組みも設けられています。また、国家は一見国際法違反と思われる行為をとった場合、国際法違反ではないとする法的理屈を立てています。
SDGsと国際法
国際連合は国際社会のほぼすべての国が参加する国際組織であり、SDGs(持続可能な開発目標)は、国際社会が2030年までに達成するべき目標として国連総会で採択されました。貧困や教育、ジェンダー、気候変動、海の豊かさなど、国際社会にとり重要な17の目標を掲げています。国際法は、人権条約・宣言(女性差別撤廃条約、障害者権利条約、国連先住民族権利宣言など)、環境条約(国連気候変動枠組条約、パリ協定、生物多様性条約など)、海洋や漁業資源の利用と保全に関する条約(国連海洋法条約、中西部太平洋マグロ類保存条約など)などを通じて、その実現を制度面で支えています。国家は、これら国際社会の公的利益の実現をめざした国際法を守ることを通じて、SDGsの達成を推進しています。この意味で、国際法はSDGsの達成にとり不可欠なものといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 法学部 法学研究科 教授 児矢野 マリ 先生
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国際法学先生が目指すSDGs
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