日本のマンガの国際競争力を高めるビジネスシステムとは
日本のマンガビジネスの特徴
コンテンツ、とりわけ映画や音楽といったエンターテインメント分野の国際市場においては、長年アメリカが優位にあります。しかし、「マンガ」においては日本作品も高い人気を誇っています。日本では1960年代にコミック雑誌が相次いで創刊されて、1995年には「週刊少年ジャンプ」が653万部の発行部数を記録するなど、右肩上がりの発展を続けてきました。アメリカのコミックが、企業が主体となり、社員の分業によって作られるのに対して、日本では編集部が作家を発掘・育成します。ヒット作品になれば作家は大きな報酬を得られるため、コミックは「ジャパニーズドリーム」の象徴でもあるのです。
ビジネスシステム
こうした日本のマンガビジネスの発展過程においては、作者と出版社が手掛ける「コミック」と、それを原作とする「アニメーション」、そのキャラクターを使った「グッズ」によって大きな収益を上げる仕組みが構築されました。例えば、アニメーション事業単体をみれば大きな収益は見込めませんが、原作を販売する出版社や、グッズをつくる玩具メーカー等がアニメーションのスポンサーになることで、より大きな収益が生まれます。このように、資本関係がない複数の企業が集まり、作品を軸にチームを組んで利益を最大化するビジネスシステムは、日本のマンガ業界の大きな特色です。
未開拓のテーマ
コミックやアニメーション、グッズなど、それぞれの事業を単体で分析する研究はこれまでにもありましたが、ビジネスシステムという観点からマンガに関わる事業を包括的に分析した研究はほとんどありません。そのため「グッズの正確な売上額」をはじめ、研究に不可欠なデータをとることが難しい、あるいは関係者へのインタビュー調査に対する協力が得られにくいという難しさもあります。マンガは多くの人にとって身近でありながら、そのビジネスについてはまだまだ明らかになっていないことが残されており、その研究にはさらなる発展が期待されているのです。
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北海道大学 大学院経済学研究院 教授 岡田 美弥子 先生
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