石油に代わる資源・バイオマスに注目!

石油に代わる資源・バイオマスに注目!

化学物質原料としての石油代替資源の開発

数ある資源のなかでも、私たちの生活に深くかかわっているのが石油です。日本に輸入される石油の約9割が燃料として消費され、1割は薬・衣類から樹脂に至るまで多方面で使われるため、原油価格の変動は社会にさまざまな影響を与えます。そうした影響の少ない社会構造に作り変えていくために、省エネルギーの化学製品製造技術の開発、新しいエネルギーの開発、そして石油以外から化学製品の原料を得る技術開発が進められています。

燃料と化学物質原料の両面で石油消費を抑える

現在、カナダなどで大量に産出する非常に重質な油(熱を加えないと溶融しない)を燃料油にする石油代替燃料油開発が進められています。その一方、石油に代わる化学物質原料として、「バイオマス」を利用する開発研究が、日本を中心に進められています。これはバイオマスリファイナリーと呼ばれています。例えば、石油資源が豊富で食料自給率の高い国では、トウモロコシやサトウキビなどからエタノール(バイオエタノールと呼ばれます)を生産し、自動車燃料に使ってしまいます。しかし、日本では、バイオエタノールを樹脂原料となるエチレンやプロピレンに変える研究が進められています。このように、日本が進める石油代替燃料油開発やバイオマスリファイナリーの技術開発は何世代も先まで安心して人が暮らすために必要なものです。

日本流バイオマスは廃棄物を活用

バイオエタノール以外に着目されたのが、有機廃棄物です。北海道で進められているプロジェクトでは、酪農農家から出る家畜のふん尿が使われています。乳牛のふん尿に生ゴミなどを混ぜたものを発酵して、まず燃料として使えるメタンガスを採取します。次に、ガスを取り終えた後の液からアンモニアを分離・採取します。そのアンモニアを使い、化成肥料の原料となる塩化アンモニウムや、燃料電池に活用できる水素を生成するというものです。
このように、環境への負担の少ないバイオマスの実用化に向けて、実証試験が着々と進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

北海道大学 工学部  教授 増田 隆夫 先生

北海道大学 工学部 教授 増田 隆夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

化学工学、有機プロセス工学

メッセージ

化学が好きなあなたは大学・企業へと進む内に大きく二つの方向に進むことになります。一つは数種の化学物質から高付加価値の物質を合成する研究、もう一つは多種の混合物から有用物質を製造する研究です。後者は複雑系の化学であり、製造現場に直結した実用化研究です。劣質な資源を石油代替資源に変える技術、バイオマス(廃棄物を含む)から有用化学物質を生産する技術などは複雑系の化学です。対象とする反応器は大きいもので25mプールに相当します。世の中、純粋のものよりも混ざり合ったものの方が実は面白いのです。

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。