海の恵みを科学する:海洋生態学とブルーカーボン
海の動植物の営みは、私たちの暮らしを支えている
地球の表面のおよそ7割を占める海には実に多様な生物が生息しています。陸上生物である人間が海の生物へアプローチするのは簡単ではなく、そのため陸上生物以上にわからないことがたくさんあります。これまでの研究者の地道な取り組みの積み重ねにより、海の生物、および彼らが暮らす海洋生態系にはさまざまな役割があることがわかってきました。その中には、魚介類の供給、水質浄化、嵐などの災害の緩和など、人々の生活にも大きな恵みをもたらすものがあり、それらは「生態系サービス」と呼ばれています。
気候変動の緩和策としてのブルーカーボン
海洋生物の生態系サービスとして、近年特に着目されているのが「ブルーカーボン」です。陸上植物と同様に、海に生きる植物も光合成によって二酸化炭素を取り込んでいます。陸上植物が吸収する二酸化炭素が「グリーンカーボン」と呼ばれるのに対し、海洋生物が吸収する分は「ブルーカーボン」と呼ばれ、地球温暖化を緩和する働きが着目されています。特に、沿岸に形成される藻場やマングローブは大量の二酸化炭素を吸収して保持するため、その保全や再生が国際的な課題になっています。
いろいろな人々との共同作業がポイント
ブルーカーボンの研究には、徒歩や潜水による現地調査に加えて、さまざまなセンサーを使った海洋観測、さらにはドローンや衛星画像などを利用したリモートセンシング解析など、最新の機器や方法を用いることが有効で、生物学、地球化学、環境工学などの異なる分野の研究者との共同作業が必須になります。さらに、ブルーカーボンを地球温暖化緩和に役立てるためには、「排出削減目標」を立案する行政担当者、「排出権取引」を担う経済学関係者との連携も重要です。もちろん、漁業者やマリンレジャー関係者など地域の人々との意見交換も欠かせません。このようにブルーカーボンの研究とその応用にはさまざまな立場の人との共同作業がポイントとなってきます。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 厚岸臨海実験所 教授 仲岡 雅裕 先生
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