送り合うことが大切? 携帯メールの役割とは
あいさつはつながりを確認する行為
「こんにちは」とあいさつをしたのに、相手からあいさつが返ってこないとき、あなたは相手の行為の意味をどう受け取るでしょうか? きっと、あなたとは付き合いたくない、話をしたくないのだと解釈することでしょう。
「こんにちは」という言葉自体に、何か重要な情報が含まれているわけではありません。しかしあいさつには、あなたと相手の間に「つながりがある」ということを確認する役割があるのです。
コミュニケーションは人間関係の潤滑油
自然科学の分野では、コミュニケーションはもっぱら「情報伝達のプロセス」ととらえられます。機械と機械の情報伝達なら、情報を伝えてそれを処理していくことの繰り返しですが、人間同士のコミュニケーションには、情報伝達に加えて人と人とのつながり、関係をうまくいくように取り持つ潤滑油のような側面があります。近年は人間関係を築くうえで、潤滑油としてのコミュニケーションの役割が一層大きくなってきました。それは言葉を「情報を伝達するもの」として考えると、情報として意味のないように思えるものがたくさんあるからです。
携帯メールを送り合うことでつながりを確かめる
人の会話の7割くらいは、たわいないゴシップだと言われます。例えば、携帯電話で友だちとやり取りしたメールを調査してみると、待ち合わせの時間など必要な情報もありますが、その多くが、「今何してる?」「退屈~♪」といった、たわいないメッセージで占められていました。あいさつと同じように、これらのメッセージには必要な情報を伝える役割はありません。情報を伝えることよりも、「メールを送り合う」という行為の方が大切なのです。
これは「プレゼント」と同じ役割だと言えます。プレゼントは中身も大切ですが、それよりも「贈る」という行為自体が、相手との関係をうまく取り持つために重要になります。つまりメールは、ある種、言葉の贈り物のようなもので、送り合うことでつながりを確認し、友だち関係を維持するという役割があるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪大学 人間科学部 社会学科目 コミュニケーション社会学分野 教授 辻 大介 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?