まちづくりを強力に推し進める、ことばの不思議な力

まちづくりを強力に推し進める、ことばの不思議な力

まちづくりボランティアと災害ボランティアの違い

ボランティア活動の代表例といえば災害とまちづくりではないでしょうか。どちらも同じボランティアとはいえ、この二つでは活動への取り組み方が大きく違います。
なぜなら、ボランティアを受け入れる相手の状況が異なるからです。災害の場合は被災者がいます。困っている人たちを助けるのが災害ボランティアです。一方、まちづくりの場合、基本的には誰も困っていません。また、目標も「生きがいのある街」など抽象的なものとなりがちで、相手にとっての緊急度や関心の高さは、災害復旧とは大違いです。
ただ、いくら緊急度が低く関心を持つ人が少ないとはいえ、まちづくりを進めるには多くの人を巻き込む必要があります。そこで、ポイントとなるのがコミュニケーションデザインです。

キャッチフレーズが人を巻き込む力になる

目的が何であれ、人の集団に何らかの方向性を持たせて活動するときは、メンバー全員でキャッチフレーズを作るとうまくいくことが多いのです。
キャッチフレーズそのものの力はもちろんですが、より重要なのは、言葉が紡ぎだされるプロセスです。自分たちが大切にすべきテーマを言葉にするとどうなるのか。全員で課題について考える行為には、集団の思いを一つにまとめる力があるのです。
ある町で、まちづくりに関わるメンバーの名刺を作ろうという話になりました。そして名刺には、まちづくりのキャッチフレーズを入れることが決まったのです。最終的に言葉が決まるまでに半年ほどかかりました。その間に何回も重ねたミーティングでは、メンバーからさまざまなアイデアが出ました。それらを一つひとつ全員で検討し、最終的にあるフレーズに決めたのです。決まった言葉の力に加えて、言葉をめぐって全員が熟考することで、場の空気が明らかに変わっていきました。キャッチフレーズそのものは、どちらかといえば平凡でしたが、そこにいたるプロセスがメンバーの気持ちを一つにをまとめたのです。

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大阪大学 人間科学部 共生学科目 共生行動論分野 教授 渥美 公秀 先生

大阪大学 人間科学部 共生学科目 共生行動論分野 教授 渥美 公秀 先生

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メッセージ

学生たちにいつも求めているのは、「とにかく現場を重視しよう」ということ。そこにいる生身の人と直に向かい合おうとする気持ちが大切です。そのためには、遠回りに思えるかもしれませんが、しっかり勉強してほしいです。年齢も人生経験も違う人たちと話をするためには、自分の人間の幅を広げておくことが必要です。文学を読む、スポーツをがんばる、文化祭に燃える、恋愛もする。そんな中で人に向かい合う気持ちを育み、人に関心を持つ人になってほしいと思います。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。