まちづくりを強力に推し進める、ことばの不思議な力
まちづくりボランティアと災害ボランティアの違い
ボランティア活動の代表例といえば災害とまちづくりではないでしょうか。どちらも同じボランティアとはいえ、この二つでは活動への取り組み方が大きく違います。
なぜなら、ボランティアを受け入れる相手の状況が異なるからです。災害の場合は被災者がいます。困っている人たちを助けるのが災害ボランティアです。一方、まちづくりの場合、基本的には誰も困っていません。また、目標も「生きがいのある街」など抽象的なものとなりがちで、相手にとっての緊急度や関心の高さは、災害復旧とは大違いです。
ただ、いくら緊急度が低く関心を持つ人が少ないとはいえ、まちづくりを進めるには多くの人を巻き込む必要があります。そこで、ポイントとなるのがコミュニケーションデザインです。
キャッチフレーズが人を巻き込む力になる
目的が何であれ、人の集団に何らかの方向性を持たせて活動するときは、メンバー全員でキャッチフレーズを作るとうまくいくことが多いのです。
キャッチフレーズそのものの力はもちろんですが、より重要なのは、言葉が紡ぎだされるプロセスです。自分たちが大切にすべきテーマを言葉にするとどうなるのか。全員で課題について考える行為には、集団の思いを一つにまとめる力があるのです。
ある町で、まちづくりに関わるメンバーの名刺を作ろうという話になりました。そして名刺には、まちづくりのキャッチフレーズを入れることが決まったのです。最終的に言葉が決まるまでに半年ほどかかりました。その間に何回も重ねたミーティングでは、メンバーからさまざまなアイデアが出ました。それらを一つひとつ全員で検討し、最終的にあるフレーズに決めたのです。決まった言葉の力に加えて、言葉をめぐって全員が熟考することで、場の空気が明らかに変わっていきました。キャッチフレーズそのものは、どちらかといえば平凡でしたが、そこにいたるプロセスがメンバーの気持ちを一つにをまとめたのです。
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